まだ先行研究で消耗してるの?

真面目に読むな。論理的に読むな。現実的なものは理性的であるだけでなく、実践的でもある。

2023-01-01から1年間の記事一覧

読書前ノート(29)稲岡大志/森功次/長門裕介/朱喜哲『世界最先端の研究が教えるすごい哲学』

目次 稲岡大志/森功次/長門裕介/朱喜哲『世界最先端の研究が教えるすごい哲学』(総合法令出版、2022年) すごくない哲学 タウマゼインとエウレカ——「すごい哲学」とは何か 稲岡大志/森功次/長門裕介/朱喜哲『世界最先端の研究が教えるすごい哲学』(…

カント『純粋理性批判』覚書(1)

目次 はじめに カント『純粋理性批判』 初版と第二版 クリティカの伝統 文献 はじめに しばらく哲学から遠ざかってたような気がする。ここ三ヶ月ほど、仕事の傍らどうも哲学書に手を伸ばすことができなかった。哲学研究は余暇がないと厳しい。時間的にも、精…

手と顔

手の親指と人差し指の付け根の辺りで皮膚が剥けた。一体何をしていたのかというと、私は大きなバルーン人形に空気を入れていただけである。空気入れのハンドルに対して、親指と人差し指とのあいだの付け根の部分をフックにしてポンプを押し出す際に接触部分…

読書前ノート(28)松永博樹・伊藤学『P/Lだけじゃない事業ポートフォリオ改革 ROIC超入門』

松永博樹・伊藤学『P/Lだけじゃない事業ポートフォリオ改革 ROIC超入門』(日本能率協会マネジメントセンター、2021年) ROIC(ロイック)とは「投下資本利益率 Return On Invested Capital」のことであり、簡単に言えば「投下資本 Invested Capital」に対す…

読書前ノート(27)志村真幸『未完の天才 南方熊楠』

志村真幸『未完の天才 南方熊楠』(講談社、2023年) 通勤中に読んでいたが面白くて仕方がない。熊楠は抜粋ノートを作っていた。子どもの頃から大量に。マルクスと同じように。熊楠は対訳本を用いて様々な言語を学んでいた。酒場のカウンターで聴き耳をして…

読書前ノート(26)石原真人『自分でパパッとできる事業計画書』

石原真人『自分でパパッとできる事業計画書』(祥伝社、2014年) 事業計画書を書こうと思っている。起業するためではない。自チームを一つの架空の会社(fictive company)として運用していく姿勢が収益体質の改善を図るのに有益ではないかと考えたからだ。…

読書前ノート(25)田尻望『付加価値のつくりかた』

田尻望『付加価値のつくりかた』(かんき出版、2022年) あっという間に今年も半年が過ぎた。6月も気づけば下旬。もう直ぐボーナスの支給日である。仕事にかまけてブログに書くことも少なくなった。仕事ばかりしている。休日に趣味の読書よりも仕事のための…

読書前ノート(24)津野香奈美『パワハラ上司を科学する』

津野香奈美『パワハラ上司を科学する』(筑摩書房、2023年) 本書は10年にわたりパワハラを研究してきた著者によって書かれた入門書である。「科学する」のタイトル通り、パワハラについて具体的な数値データに基づいて分析結果が示されている。著者がパワハ…

マルクス「フォイエルバッハ・テーゼ」覚書(2)

目次 マルクス「フォイエルバッハ・テーゼ」(承前) 文献 sakiya1989.hatenablog.com マルクス「フォイエルバッハ・テーゼ」(承前) 10テーゼ Der Standpunkt des alten Materialismus ist die bürgerliche Gesellschaft, der Standpunkt des neuen die me…

読書前ノート(23)大塚ひかり『ヤバいBL日本史』

大塚ひかり『ヤバいBL日本史』(祥伝社、2023年) 〈性政治〉の誕生 本書はBL(ボーイズラブ)の観点から日本史を整理するという大胆な試みを行っている。著者の大塚ひかりさんは、古典の内容を的確に捉え、現代の言葉で表現することに長けており、すでにい…

マルクス「フォイエルバッハ・テーゼ」覚書(1)

目次 マルクス「フォイエルバッハ・テーゼ」 11テーゼ 「世界」はマルクスの文脈だけで解釈されるべきか 文献 マルクス「フォイエルバッハ・テーゼ」 11テーゼ Die Philosophen haben die Welt nur verschiden interpretirt, es kömmt drauf an sie zu verän…

総括資料をつくる(3)

sakiya1989.hatenablog.com この三日間、総括資料をつくるために読書をしていた。資料作成もせずに読書に耽っているというのは、勉強しなければいけないときに部屋の片付けをしたくなる気持ちにどこか似ている。もちろん部屋が片付くことは好ましいことだし…

総括資料をつくる(2)

sakiya1989.hatenablog.com 何が(どういったメッセージが)刺さるか(バズワードや時代性を考慮に入れる) バズワードといえば、一年前であればメタバースであった。ここ最近聞かれるようになった言葉といえば、「人的資本経営」だとか「リスキリング」など…

総括資料をつくる(1)

はじめに 会社で一週間後に総括発表をやるように言われている。部署編成が変わりたった一ヶ月で何を総括するのかという声もある。私の場合は逆に毎週アクション内容を課内で発信し続けているので、資料じたいは作成可能だと思うが、休日に資料作成に取り掛か…

ヘーゲル『法の哲学』覚書:「世界史」篇(4)

目次 ヘーゲル『法の哲学』(承前) 世界史(承前) ギリシア帝国 ポリスを支えるオイコスにおける「欲求」の担い手としての奴隷身分 文献 sakiya1989.hatenablog.com ヘーゲル『法の哲学』(承前) 世界史(承前) ギリシア帝国 第356節 2)ギリシア帝国 こ…

読書前ノート(22)濱口桂一郎『ジョブ型雇用社会とは何か——正社員体制の矛盾と転換』

濱口桂一郎『ジョブ型雇用社会とは何か——正社員体制の矛盾と転換』(岩波書店、2021年) 昨今聞かれるようになった「ジョブ型雇用」という用語を生み出したのは、本書の著者である濱口桂一郎(1958-)だという。誤解を恐れず言うならば、日系企業の「メンバ…

読書前ノート(21)斎藤環『100分de名著2022年12月 中井久夫スペシャル 』

斎藤環『100分de名著2022年12月 中井久夫スペシャル 』(NHK出版、2022年) 目の前の人間を尊重する精神医学 中井久夫はいわゆる「DSM-5」に依拠する普遍症候群の精神医学一辺倒ではなく、「個人症候群」というスタンスに基づいて個々の患者に寄り添うという…

読書前ノート(20)A・S・バーウィッチ『においが心を動かす——ヒトは嗅覚の動物である』

A・S・バーウィッチ『においが心を動かす——ヒトは嗅覚の動物である』(太田直子訳、河出書房新社、2021年) 「におい」を忘れずに哲学できるか 「におい」という存在をすっかり忘れていた。このことに気がついたのは、昨日ルミネの化粧品売り場を通りかかっ…

読書前ノート(19)アントワーヌ・アルノー/ピエール・ニコル『ポール・ロワイヤル論理学』

アントワーヌ・アルノー/ピエール・ニコル『ポール・ロワイヤル論理学』(山田弘明・小沢明也訳、法政大学出版局、2021年) 「ロジック」をどう教えるか 4月に入り、私にも社内異動があり、部下は2人から8人へ増えた。——増えすぎじゃないかー?——増えた部下…

弊社の販売契約社員5年満期雇い止めに妥当性はあるか(2)

sakiya1989.hatenablog.com 「ブラック企業」*1とはこのことか、と思った。「ブラック企業」とはもちろん弊社(ソフトバンク株式会社)のことである。こんなことを書いたら私は弊社から訴訟を起こされても仕方がないと思うが、「ブラック企業」という評価に…

弊社の販売契約社員5年満期雇い止めに妥当性はあるか

元部下から連絡がきた。 「お世話になりました。」 当然知ってはいたが、今月で弊社を辞めるのだという。 ちょうど一年前まで自分が担当していた。働きぶりも良く、雇い止めになるという事実は受け入れ難い。 自分が販売契約社員だったときには5年経ったら無…

読書前ノート(18)藤原辰史『植物考』

藤原辰史『植物考』(生きのびるブックス、2022年) 「植物性」とは何か 先日仕事でトラックを待っていたら、予定の時刻になってもトラックが到着せず、ドライバーから遅延の連絡もなかったので、ただひたすらボーッと景色を眺めていた。その際に、一つの植…

ヘーゲル『宗教哲学講義』覚書(2)

目次 ヘーゲル『宗教哲学講義』(承前) 対象となる宗教はどのような領域か (1)マールハイネケ版(1832年) (2)B. バウアー版(1840年) 文献 sakiya1989.hatenablog.com ヘーゲル『宗教哲学講義』(承前) 対象となる宗教はどのような領域か Der Gege…

ヘーゲル『宗教哲学講義』覚書(1)

目次 はじめに ヘーゲル『宗教哲学講義』 序文 宗教哲学のコンテクスト 文献 はじめに 本稿ではヘーゲル『宗教哲学講義』(夏学期1827年、GW版2021年)を読む。 ヘーゲルの『宗教哲学講義』は、我々にとってヘーゲルのテクストの中でも最も取っ付きにくいも…

読書前ノート(17)D. F. シュトラウス『イエスの生涯』

D. F. シュトラウス『イエスの生涯』(岩波哲男訳、教文館、1996年) ヘーゲル左派運動はここから始まった ドイツの宗教批判は本書から始まり、フォイエルバッハやバウアー、マルクスへ影響を与えた。著者のダーフィト・シュトラウス(David Friedrich Strau…

マルクス「ユダヤ人問題によせて」覚書(2)

目次 マルクス「ユダヤ人問題によせて」(承前) ブルーノ・バウアーの著作への書評という形式 文献 sakiya1989.hatenablog.com マルクス「ユダヤ人問題によせて」(承前) ブルーノ・バウアーの著作への書評という形式 マルクス「ユダヤ人問題によせて」 ブ…

読書前ノート(16)佐藤貴史『ドイツ・ユダヤ思想の光芒』

佐藤貴史『ドイツ・ユダヤ思想の光芒』(岩波書店、2015年) 20世紀ドイツのユダヤ思想 本書では、主に20世紀のドイツ・ユダヤ人思想家たち——ヘルマン・コーエン(Hermann Cohen, 1842-1918)、マルティン・ブーバー(Martin Buber, 1878-1965)、ゲルショム…

マルクス「ユダヤ人問題によせて」覚書(1)

目次 はじめに マルクス「ユダヤ人問題によせて」 問題関心の類型 文献 はじめに 本稿ではマルクス「ユダヤ人問題によせて」(Zur Judenfrage, 1844)の読解を試みる。 「ユダヤ人問題によせて」は、1844年にマルクスがルーゲと共同編集でパリで出版した『独…

清少納言『枕草子』覚書(3)

目次 清少納言『枕草子』 第二段 月からみた一年 文献 sakiya1989.hatenablog.com 清少納言『枕草子』 第二段 月からみた一年 北村1674(早稲田大学図書館古典籍総合データベース:文庫30_e0094_0001_p0007) 頃は、正月。三月。四・五月。七月。八・九月。…

清少納言『枕草子』覚書(2)

目次 清少納言『枕草子』 第一段 春夏秋冬と陽の光 文献 sakiya1989.hatenablog.com 清少納言『枕草子』 第一段 春夏秋冬と陽の光 北村1674(早稲田大学図書館古典籍総合データベース:文庫30_e0094_0001_p0006) 北村1674(早稲田大学図書館古典籍総合デー…