まだ先行研究で消耗してるの?

真面目に読むな。論理的に読むな。現実的なものは理性的であるだけでなく、実践的でもある。

読書前ノート(24)津野香奈美『パワハラ上司を科学する』

津野香奈美『パワハラ上司を科学する』(筑摩書房、2023年)

 本書は10年にわたりパワハラを研究してきた著者によって書かれた入門書である。「科学する」のタイトル通り、パワハラについて具体的な数値データに基づいて分析結果が示されている。著者がパワハラについて研究するようになったきっかけは、学生時代にテレアポのアルバイトで目の当たりにしたパワハラの実態だった。私も営業の一人として、営業の環境においてパワハラが起きやすいのは重々承知している。そこではしばしば、件数という実績を追うことが至上命題になり、人間の尊厳が件数によって担保されがちだからである。

多忙のため以前買ったことを忘れており、同じ本を二回買ってしまった。

 筆者自身、最近パワハラについて本気で研究する必要があると感じている。「何がパワハラに該当し、何がパワハラに該当しないのか」を踏まえていない限り、上司として適切な指示出しができないからである。ある意味伝え方の問題でもあるが、上司の立場になってみると意外と難しい。パフォーマンスを上げるには指示を出さなければいけないのだが、その指示の仕方に問題がある。パワハラをせずにパフォーマンスを上げるための考え方として近年「心理的安全性」がキーワードにあがってきたのは、パワハラがNG扱いになったととセットで捉える必要があるだろう。