まだ先行研究で消耗してるの?

真面目に読むな。論理的に読むな。現実的なものは理性的であるだけでなく、実践的でもある。

『源氏物語』覚書(2)

目次

sakiya1989.hatenablog.com

源氏物語』(承前)

桐壺(承前)

(『校異源氏物語』巻一、5頁)

……はじめより、我は、と思い上がりたまへる御方、めざましき物におとしめそねみ給ふ。同じ程、それよりげらふの更衣たちはましてやすからず。朝夕の宮仕へにつけても人の心をのみ動かし、うらみを負う積りにやありけむ、いとあづしくなりゆき、物心ぼそげに里がちなるを、いよいよ飽かずあはれなる物に思ほして、人の譏りをもえ憚らせ給はず、世のためしにも成りぬべき御もてなしなり。

(『源氏物語(一)桐壺―末摘花』岩波文庫、2017年、14頁)

與謝野晶子訳で鮮やかに訳出されているように、ここでは「最上の貴族出身ではないが深い御愛寵を得ている人があった」という「陽」の側面と、「宮中にはいった女御たちからは失敬な女としてねたまれた」という「陰」の側面との対比が描かれている。「そねみ」や「うらみ」を與謝野晶子が「嫉妬」と訳しているように、「嫉妬」がこの物語を動かす鍵となる感情として最初に登場している。

(つづく)

文献