まだ先行研究で消耗してるの?

真面目に読むな。論理的に読むな。現実的なものは理性的であるだけでなく、実践的でもある。

2019-01-01から1年間の記事一覧

図書館としてのコーヒー・ハウス

現代の多くの喫茶店からはとっくの昔に失われてしまっていますが、かつてコーヒー・ハウスには、図書館(ライブラリー)としての機能があったそうです。 多くのコーヒーハウスでは、パンフレットや山積みにされた小冊子(tract)のみならずニュースレター(n…

規定性の捨象と創造性——喫茶店の源流としてのコーヒー・ハウス——

はじめに 今回は「規定性の捨象と創造性」と題して、喫茶店の源流としてのコーヒー・ハウスについて取り上げたいと思います。 前々回の「喫茶店と資本主義の精神——喫茶店で仕事が捗るのは何故なのか——」をリリースした直後、いくつかのコメントをいただきま…

「喫茶店と資本主義の精神——喫茶店で仕事が捗るのは何故なのか——」へのコメントとそのリプライ

はじめに 昨日リリースした「喫茶店と資本主義の精神ーー喫茶店で仕事が捗るのは何故なのか」には多くのアクセスがありました。 こちらの記事をリリースしてからおよそ半日で1000以上ものアクセスがありました。最初に千葉雅也先生にRTされたことにより、よ…

喫茶店と資本主義の精神——喫茶店で仕事が捗るのは何故なのか——

はじめに 今回は「喫茶店と資本主義の精神——喫茶店で仕事が捗るのは何故なのか——」というテーマで書きたいと思います。 このテーマのきっかけとなったのは、千葉雅也先生の次のツイートです。 ルノアールの仕事の捗り方はハンパない。生産性の神様がいるんじ…

人文系研究者を目指すならバーンレートを意識してみよう

デフォルトで生きているのか、死んでいるのか ——ポール・グレアム(Yコンビネーター) はじめに 今回は「人文系研究者を目指すならバーンレートを意識してみよう」というタイトルで書きたいと思います。 今回のテーマで書こうと思ったのは、TwitterのTLでし…

リスニング教材としてのYouTube

はじめに 今回は「リスニング教材としてのYouTube」というテーマで書きたいと思います。 じつは最近の私はYouTubeを使ってリスニング能力を磨くことに力を入れています。YouTubeは外国語教材の宝庫と言っても過言ではないくらい、コンテンツが豊富に揃ってい…

私の外国語学習歴(2)フランス語でマルクスを読む

前回からの続きです。 sakiya1989.hatenablog.com 社会思想史のゼミに入る そんな感じで、大学二年でドイツ語とフランス語を独学でサラッと学んできました。これらの言語を学ぼうと思ったのは、そもそも当時の私がすでに生涯、思想や哲学の研究を本格的に行…

私の外国語学習歴(1)英語・ドイツ語・フランス語

はじめに 今回は「私の外国語学習歴」というタイトルで書きたいと思います。 私が参加しているヘーゲル精神現象学の読書会に、最近中国から留学にやって来た院生が参加するようになりました。その留学生はドイツ語が堪能なので、読書会でのコミュニケーショ…

Audibleで古典を聴く

今回はAmazonのAudibleというサービスについて書きたいと思います。 僕の最近の悩みは仕事で体力を消耗してしまい、全然本が読めないことです。仕事が終わると瞼を開けておくのも面倒なので、目を瞑りながら本を読むことができたらいいのになぁとつくづく思…

藝大に行く道が墓場だった話

昨日はですね、小谷さんの単著進捗報告会に参加するために、東京藝術大学に初めて行きました。その道中のお話をします。 socio-logic.jp まず日暮里に降り立った私。 日暮里駅前広場で銅像を見つけました。 調べたところ、これは彫刻家であった橋本活道氏の…

AbemaTVはテレビの代わりになりうるか

今回は「AbemaTVはテレビの代わりになりうるか」というテーマで書きたいと思います。 sakiya1989.hatenablog.com テレビがなくても生活に支障はない 前回書いたように、OYO LIFEで一人暮らしをはじめました。 僕が借りた部屋は「家具なし・家電なし」の物件…

OYO LIFEで一人暮らしはじめました

突然ですが、OYO LIFEで一人暮らしはじめました。 皆さんはOYOって知ってますか。インド発の会社なのですが、最近日本でもOYO LIFEとしてサービスを開始してます。OYOはインドではホテルを扱う業態でしたが、日本ではホテルのように居住地を決められるような…

スピノザ『神学・政治論』における聖書解釈

はじめに 皆さんはスピノザ(Spinoza, 1632-1677)*1という哲学者をご存知でしょうか。スピノザはアムステルダムのユダヤ共同体のうちに生まれましたが、徐々にユダヤ教の教義に疑問を抱くようになり、また活発化していた反デカルト主義運動の潮流のため、ユ…

「普通」とは「良いこと」なのか——あるいは、ギフテッドに対する下方のピアプレッシャー

はじめに 今回は「「普通」とは「良いこと」なのか」というテーマで書きたいと思います。 きっかけは次のツイートを見かけたことです。 友「子供、たまに保育園を休ませてるんだって?」僕「たまにね」友「それよくないと思うな」僕「なんで?」友「普通そう…

Zenlyで恋人の信頼を取り戻せるか

めずらしく職場の女性Sさん(仮名)が相談してきた。 Sさんには1年ほど前から付き合っている彼氏がいる。 Sさんはもうすぐ彼氏の実家で働く予定で、ゆくゆくは結婚も視野に入れているところだった。そんな矢先、Sさんは彼氏であるMさんのことが信用できなく…

ロボットと労働

目次 はじめに 「ロボット」と「労働」 「ロボット」という語は「ロボータ」と「ロボトニーク」のかばん語として造語されたという言説について おわりに 文献 はじめに 今回は「ロボットと労働」というテーマで書きたいと思います。 いきなりですが、「ロボ…

私にとっての〈在野研究者〉

目次 はじめに Twitter上の「在野研究者」についての意見 1.「在野研究者」よりも相応しい名称がある(フリーランス・独立(系)研究者・日曜研究者など) 2.「在野」とは辞書的には「官」に対する「民」を意味する。それゆえ「在野研究者」は、民間の私大…

ヘーゲル『精神現象学』立法理性のコンテクストとカント批判

目次 はじめに ⒈ 先行研究におけるカント批判という読解 ⒉ コンスタンとカントの虚言論争というコンテクスト 文献 はじめに 今回は「ヘーゲル『精神現象学』立法理性のコンテクストとカント批判」というテーマで書く。その概要は以下の通りである。 我々は(…

「文字じゃない言語」──山口つばさ『ブルーピリオド』

はじめに ねとらぼの対談も面白い 美大の学費と親による承認の問題 なぜ『ブルーピリオド』に心揺さぶられるのか 「文字じゃない言語」──自己表現の先にある「会話」 はじめに Twitterで「インテリヤンキーが絵をかく楽しさに目覚める話」というものを見かけ…

Wikipediaを利用した学習法

はじめに 最近、知らない言葉が増えてきました。 いや、正確に言うと、以前から少しずつ見聞きしていたのですが、改めて考えると説明できないし、よく分かっていない言葉が沢山あったのです。グラント*1、ハーマン、レイ・ブラシエ*2、加速主義、ゼノフェミ…

スマホ決済サービスについて

目次 スマホ決済サービス WeChat Payの利用者を爆発的に増加させた「红包」機能 「全員にあげちゃう300億円祭」(LINE Pay) 文献 スマホ決済サービス さて、今回は「スマホ決済サービスについて」というテーマで書こうと思います。 今一番ホットな話題が「…

ジャック・デリダ『弔鐘 (Glas)』について

今日はジャック・デリダ『弔鐘 (Glas)』を読んでおりました。 たまには外国語読まないと読めなくなりそうなので、今日はGlasの試訳でも作ってみる。 — Sakiya ARAKAWA (@hegelschen) 2019年3月27日 ジャック・デリダの『弔鐘』は、完訳が待望される著書の一…

「マンスプレイニング」について──レベッカ・ソルニット『説教したがる男たち』を中心に

はじめに 今回は「「マンスプレイニング」について──レベッカ・ソルニット『説教したがる男たち』を中心に」というタイトルで書きたいと思います。 皆さんは「マンスプレイニング」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。「マンスプレイニング」とは、男…

ウンベルト・エーコの著作(邦訳)の暫定的なまとめ

はじめに:エーコ追悼 本日2月19日は、ウンベルト・エーコ(1932-2016)の命日である。三年前の2月19日22時30分に彼は息を引き取った。死因はがんであった。 ウンベルト・エーコは、稀有な才能をもつ"文学者"であった。それは、彼が記号学などの分野で学者とし…