まだ先行研究で消耗してるの?

真面目に読むな。論理的に読むな。現実的なものは理性的であるだけでなく、実践的でもある。

2021-01-01から1年間の記事一覧

ヘーゲル社会哲学とジェンダー

はじめに どんな領域においても現代においてはジェンダーの問題を取り上げることなしに論じることはできない。哲学もまたそうである。私が繰り返し取り上げているヘーゲルの場合はどうだろうか。そもそもジュディス・バトラー自身がヘーゲル研究をバックボー…

学術的なことは何も出来ません

最近このブログが全然更新できてないことがお分かりいただけるだろうか。とにかく仕事の方に傾倒しなければとてもやっていけないほど今は余裕がないのである。もちろん休日はあるが、休日は仕事のメールを見てしまうし不安しかない。不安を搔き消すためにビ…

マルクス『資本論』第一巻「初版への序文」(1)

はじめに 本稿ではマルクス『資本論』第一巻「初版序文」を見ていく. マルクス『資本論』第一巻「初版への序文」 マルクスの病気:潰瘍・肝臓病・フルンケル (1)ドイツ語初版 序文 私がその第一巻を刊行するこの著作は,1859年に出版された私の著書『政…

マルクス『資本論』におけるダンテ『神曲』(1)

はじめに 「マルクスとダンテ」というテーマが主題として書かれることはほとんどない。だが、もし仮に「マルクスとダンテ」というテーマを立てるとすれば、一体どのようなことが明らかになるだろうか。おそらくこのテーマに取り組んでみることは、我々が『資…

気づけば師走

仕事で所属する課が変わり、勤務地も移動し、新しい役割になって早1ヶ月。『〈目まぐるしい〉とはこういうことを言うのか』と思うぐらいあっと言う間だった。とにかく頭の中は常に『!?』『ワカラナイ…』『進捗ダメです!』のサイクルを回しているだけで決…

ヘーゲル『法の哲学』覚書:「対外主権性」篇(6)

目次 ヘーゲル『法の哲学』(承前) 対外主権性(承前) 偶然性と必然性,自然態と人倫態,そして自由 文献 sakiya1989.hatenablog.com ヘーゲル『法の哲学』(承前) 対外主権性(承前) 偶然性と必然性,自然態と人倫態,そして自由 ——いま述べられた点に…

ヘーゲル『法の哲学』覚書:「対外主権性」篇(5)

目次 ヘーゲル『法の哲学』(承前) 対外主権性(承前) 「国家」を「市民社会」と取り違えてはならない 文献 sakiya1989.hatenablog.com ヘーゲル『法の哲学』(承前) 対外主権性(承前) 「国家」を「市民社会」と取り違えてはならない 第324節の注解を見…

どうしてこうなった

11月になり、異動になった。まず自分の役割が変わったし、周囲の人間関係も変わってしまった。知らない人たちの前で失礼は許されないので、業務で迷惑にならないようにビジネススキルを改めて学んでいる。この変化は、ほとんど社内転職したに等しい。新しい…

マルクス『資本論』覚書(18)

目次 マルクス『資本論』(承前) 第一部 資本の生産過程(承前) 社会的必要労働時間の量によって規定される価値の大きさ 文献 sakiya1989.hatenablog.com マルクス『資本論』(承前) 第一部 資本の生産過程(承前) 社会的必要労働時間の量によって規定さ…

「自立」の概念について

先日の自分の昇進試験の際に、あるスライドに「自立して動けるチームを作る」というスローガンを盛り込んだのだけれども、このスローガンがはたして良かったのかどうかということが頭に浮かんでくる。実際、『「自立」とはどういうことかをしっかりと説明で…

ヘーゲル『法の哲学』覚書:「対外主権性」篇(4)

目次 ヘーゲル『法の哲学』(承前) 対外主権性(承前) 肯定的なものとしての国家の主権性と自主独立 文献 sakiya1989.hatenablog.com ヘーゲル『法の哲学』(承前) 対外主権性(承前) 肯定的なものとしての国家の主権性と自主独立 第324節 個々人の利益…

マルクス『資本論』覚書(17)

目次 マルクス『資本論』(承前) 第一部 資本の生産過程(承前) 社会的平均労働時間と価値の低落 文献 sakiya1989.hatenablog.com マルクス『資本論』(承前) 第一部 資本の生産過程(承前) 社会的平均労働時間と価値の低落 (1)ドイツ語初版 ある商品…

これからの話

師匠とオンラインミーティングをした。先日、LINEで師匠に『ニコラス・バーボンの翻訳をしました』と報告をしたことがきっかけだった。その報告からしばらく経って、オンラインで話しましょうということになった。僕は修士を出てからもう六年半も経つけれど…

マルクス『資本論』覚書(16)

目次 マルクス『資本論』(承前) 第一部 資本の生産過程(承前) 「労働時間」によって計られる「価値」 文献 sakiya1989.hatenablog.com マルクス『資本論』(承前) 第一部 資本の生産過程(承前) 「労働時間」によって計られる「価値」 (1)ドイツ語…

マルクス『資本論』覚書(15)

目次 マルクス『資本論』(承前) 第一部 資本の生産過程(承前) 人間的労働と価値の共同社会性 文献 sakiya1989.hatenablog.com マルクス『資本論』(承前) 第一部 資本の生産過程(承前) 人間的労働と価値の共同社会性 (2)ドイツ語第二版 そこで我々…

ヘーゲル『法の哲学』覚書:「対外主権性」篇(3)

目次 ヘーゲル『法の哲学』(承前) 対外主権性(承前) 国家の外部性と否定的連関 文献 sakiya1989.hatenablog.com ヘーゲル『法の哲学』(承前) 対外主権性(承前) 国家の外部性と否定的連関 第323節 定在においては,だから,国家が自己に対してもつこ…

ヘーゲル『法の哲学』覚書:「対外主権性」篇(2)

目次 ヘーゲル『法の哲学』(承前) 対外主権性(承前) 諸国家の独立性と統合の問題 文献 sakiya1989.hatenablog.com ヘーゲル『法の哲学』(承前) 対外主権性(承前) 諸国家の独立性と統合の問題 第322節 排他的な対゠自゠存在としての個体性は,他の諸…

ヘーゲル『法の哲学』覚書:「対外主権性」篇(1)

目次 はじめに ヘーゲル『法の哲学』 対外主権性 個体性としての対外主権性 文献 はじめに 以下では,ヘーゲル『法の哲学』第三部「人倫」第三章「国家」A「国内法」II「対外主権性」を取り扱う. ヘーゲル『法の哲学』 対外主権性 個体性としての対外主権性…

現状と課題

最近は仕事上の課題が立て込んでおり、おそらく再来週までは、とてもじゃないが落ち着いて哲学など出来る状態ではない。 仕事上の課題とは、通常業務に関するものではなくて、今後のターニングポイントになり得るような私個人のキャリアに関わることである。…

マルクス『資本論』覚書(14)

目次 マルクス『資本論』(承前) 第一部 資本の生産過程(承前) 労働の測度単位としての単純平均労働 文献 sakiya1989.hatenablog.com マルクス『資本論』(承前) 第一部 資本の生産過程(承前) 労働の測度単位としての単純平均労働 次の箇所もドイツ語…

〔翻訳〕ニコラス・バーボン『より軽い新貨幣の鋳造に関する論究』(19)

目次 ニコラス・バーボン『より軽い新貨幣の鋳造に関する論究』(承前) 貨幣,およびいくつかの鋳貨の額面について(承前) 名目価値と実質価値のズレ 文献 sakiya1989.hatenablog.com ニコラス・バーボン『より軽い新貨幣の鋳造に関する論究』(承前) 貨…

〔翻訳〕ニコラス・バーボン『より軽い新貨幣の鋳造に関する論究』(18)

目次 ニコラス・バーボン『より軽い新貨幣の鋳造に関する論究』(承前) 貨幣,およびいくつかの鋳貨の額面について(承前) ロック貨幣論への問題提起 文献 sakiya1989.hatenablog.com ニコラス・バーボン『より軽い新貨幣の鋳造に関する論究』(承前) 貨…

〔翻訳〕ニコラス・バーボン『より軽い新貨幣の鋳造に関する論究』(17)

目次 ニコラス・バーボン『より軽い新貨幣の鋳造に関する論究』(承前) 貨幣,およびいくつかの鋳貨の額面について ロック『再考察』からの引用 文献 sakiya1989.hatenablog.com ニコラス・バーボン『より軽い新貨幣の鋳造に関する論究』(承前) 貨幣,お…

マルクス『資本論』覚書(13)

目次 マルクス『資本論』(承前) 第一部 資本の生産過程(承前) 「抽象的人間的労働」はいかなる意味で「抽象的」か 文献 sakiya1989.hatenablog.com マルクス『資本論』(承前) 第一部 資本の生産過程(承前) 「抽象的人間的労働」はいかなる意味で「抽…

マルクス『資本論』覚書(12)

目次 マルクス『資本論』(承前) 第一部 資本の生産過程(承前) 商品の多様性と統一性 原注9 文献 sakiya1989.hatenablog.com マルクス『資本論』(承前) 第一部 資本の生産過程(承前) 商品の多様性と統一性 (1)ドイツ語初版 それらの交換関係すな…

ラシャトル版かオリオル復刻版か?——フランス語版『資本論』をめぐって

目次 はじめに ラシャトル版(1872-75)とオリオル復刻版(1884/85) オックスフォード大学所蔵本 ローマ・サピエンツァ大学所蔵本 文献 はじめに フランス語版『資本論』には,ラシャトル版とオリオル復刻版と呼ばれる二つの版本があることが知られている.…

『シン・エヴァ』を外国語で観て気づいたこと

目次 はじめに 『シン・エヴァ』を外国語で観て気づいたこと フランス語のリツコ「私の経験よ」 ドイツ語のKREDITの発音 おわりに はじめに 先日よりAmazonプライム・ビデオで『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が多言語で全世界に配信されるようになりました…

ライプニッツ『モナドロジー』覚書(4)

目次 ライプニッツ『モナドロジー』(承前) 〈事物の要素〉としての「モナド」 文献 sakiya1989.hatenablog.com ライプニッツ『モナドロジー』(承前) 〈事物の要素〉としての「モナド」 (1)エルトマン版(1839年) (2)ゲルハルト版(1885年) 3 さ…

ライプニッツ『モナドロジー』覚書(3)

目次 ライプニッツ『モナドロジー』(承前) 「単純な実体」の〈集合〉としての「複合体」 文献 sakiya1989.hatenablog.com ライプニッツ『モナドロジー』(承前) 「単純な実体」の〈集合〉としての「複合体」 (1)エルトマン版(1839年) (2)ゲルハル…

ライプニッツ『モナドロジー』覚書(2)

目次 ライプニッツ『モナドロジー』(承前) 「単純な実体」としての「モナド」 文献 sakiya1989.hatenablog.com ライプニッツ『モナドロジー』(承前) 「単純な実体」としての「モナド」 (1)エルトマン版(1839年) (2)ゲルハルト版(1885年) 1 私…