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ヘーゲル『法の哲学』覚書:「対外主権性」篇(4)

目次

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ヘーゲル『法の哲学』(承前)

対外主権性(承前)

肯定的なものとしての国家の主権性と自主独立

  第324節

 個々人の利益と権利が消滅する一契機として定立されるというこの規定は,同時に肯定的なもの,すなわち個々人の偶然的でも,可変的でもない,即かつ対自的に存在する個体性を肯定するものである.したがって,この関係とこれを承認することは,個々人の実体的義務である,——すなわち,個人の臆見やその生活の範囲におのずから含まれているすべてのものはいうにおよばず,個人の所有物や生命をも,危険に曝し,犠牲にして,この実体的個体性を,すなわち国家の独立性と主権性を保持するという義務である.

(Hegel1820: 331,上妻ほか訳337頁)

「個々人の利益と権利が消滅する一契機として定立される」という事態は,一見すると否定的なものであるように思われるが,ヘーゲルはこの契機を「肯定的なもの」と見る.というのも,「個々人の利益と権利」が「消滅する」ことによって,かえって「国家の独立性と主権性」という「実体的個体性」が保持されるからである.むろん個々人が国家に対してこのように屈服するような関係に対しては個々人側からの反発を招くことが当然予測される.だが,まさに国家に対する個々人のそうした反抗的な事態をヘーゲルが想定しているからこそ,国家と個人との関係を「承認すること Anerekennung 」が個々人にとっての「実体的義務」だとヘーゲルは説くのである.本節注解で述べられているように,こうした理論の背景にあるのは戦争である.

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