まだ先行研究で消耗してるの?

真面目に読むな。論理的に読むな。現実的なものは理性的であるだけでなく、実践的でもある。

弊社の販売契約社員5年満期雇い止めに妥当性はあるか(3)

sakiya1989.hatenablog.com

 販売契約社員5年雇い止めには、場合によっては解雇権濫用法理(労働契約法第16条)が類推適用される場合があり得ると筆者は考える。なぜならば、(1)販売契約社員が行なっている業務は販売職正社員と全く変わらない(にもかかわらず、形式的に臨時社員として扱っているに過ぎない)点、(2)雇用契約更新の形式的な反復性とその多さ、そしてここからが本題なのだが、(3)販売契約社員5年目の最後の半期に正社員登用試験を受けた場合には、その者は一定期間に渡って平均を超える能力を収めたものと見なされ、したがって雇用契約の当初より5年満期の雇用契約書に両者が合意しているとしても、数ヶ月にわたる最後の正社員登用試験のプロセスにおいて、雇用の継続を期待する合理的な理由が発生すると考えられるからである。

 正社員登用の合否結果は解雇のおよそ1ヶ月前まで開示されないので、正社員登用をエサに販売契約社員に対する労働強化の手綱はギリギリまで緩められることがないのだが、これによって絶対的・相対的剰余価値が見事に極大化されている光景を定期的に観るのは、極めて「ブラック企業」的な風物詩である。

 ルドルフ・フォン・イェーリング(Rudolf von Jhering, 1818-1892)の『権利のための闘争』(Der Kampf ums Recht, 1872)に倣い、当事者は自身の権利を主張して闘うべしと筆者は考えるが、弊社に訴訟を起こすような知的体力のある者がこの仕事についているとは到底思えない——常識的に考えて、解雇された臨時社員が弊社法務部の弁護士とやり合って勝てる目算がどれほどあるだろうか——ので、残念ながらこの点でも会社の思う壺なのである。