まだ先行研究で消耗してるの?

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マルクス『資本論』覚書(16)

目次

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マルクス資本論』(承前)

第一部 資本の生産過程(承前)

「労働時間」によって計られる「価値」

(1)ドイツ語初版

 それゆえ,ある使用価値または財貨が一つの価値を持っているのはただ,労働がそれに対象化または物質化されているからでしかない.では,それの価値の大きさはどのようにして計られるのか? それに含まれる「価値形成実体」,すなわち労働のによってである.労働の量そのものは,労働の継続時間で計られ,労働時間はまた一時間とか一日とかいうような特定の時間部分をその度量標準としている.

(Marx1867: 4–5)

(2)ドイツ語第二版

 諸商品の交換関係そのもののなかでは,商品の交換価値は我々にとってその使用価値からまったく独立したものとして現象した.そこで,現実的に労働生産物の使用価値を捨象してみれば,ちょうどいま規定されたような労働生産物の価値が得られるのである.商品の交換関係または交換価値において表現されている共通物は,それゆえ,商品の価値である.研究の進行は,我々を,価値の必然的な表現様式または価値の現象形式としての交換価値につれもどすことになるであろう.しかし,この価値は,さしあたりまずこの形式とは独立に考察されなければならない.

 それゆえ,ある使用価値または財貨が一つの価値を持っているのはただ,抽象的人間的労働がそれに対象化または物質化されているからでしかない.では,それの価値の大きさはどのようにして計られるのか? それに含まれる「価値形成実体」,すなわち労働の量によってである.労働の量そのものは,労働の継続時間で計られ,労働時間はまた一時間とか一日とかいうような特定の時間部分をその度量標準としている.

(Marx1872a: 13)

(3)フランス語版

 交換関係のうちに,あるいは諸商品の交換価値のうちに現われる共通の各々の物は,したがって,それら諸商品の価値である.こういうわけで,使用価値または財貨は,人間的労働がそのうちに物質化されているかぎりにおいてのみ,価値をもつのである.

 では,その価値量はどのようにして計られるのであろうか?それらに含まれる「価値形成」実体,すなわち労働のによってである.労働の量そのものは,労働時間を尺度とし,労働時間はまた時間や日などというような一定の時間部分をその尺度としている.

(Marx1872b: 15,井上・崎山訳531・533頁)

(4)ドイツ語第三版

 諸商品の交換関係そのもののなかでは,商品の交換価値は我々にとってその使用価値からまったく独立したものとして現象した.そこで,現実的に労働生産物の使用価値を捨象してみれば,ちょうどいま規定されたような労働生産物の価値が得られるのである.商品の交換関係または交換価値において表現されている共通物は,それゆえ,商品の価値である.研究の進行は,我々を,価値の必然的な表現様式または価値の現象形式としての交換価値につれもどすことになるであろう.しかし,この価値は,さしあたりまずこの形式とは独立に考察されなければならない.

 それゆえ,ある使用価値または財貨が一つの価値を持っているのはただ,抽象的人間的労働がそれに対象化または物質化されているからでしかない.では,それの価値の大きさはどのようにして計られるのか? それに含まれる「価値形成実体」,すなわち労働の量によってである.労働の量そのものは,労働の継続時間で計られ,労働時間はまた一時間とか一日とかいうような特定の時間部分をその度量標準としている.

(Marx1883: 5,『資本論①』77〜78頁)

ドイツ語初版と第二版以降を見比べてみると,第二版以降では一つのパラグラフが追加されていることがわかる.

 この追加されたパラグラフは,全体の流れを整理するような内容である.そこでマルクスは交換価値を「現象形式」と呼び,「商品の価値」と区別している.この違いはどこにあるのだろうか.結論から言えば,「現象形式」としての交換価値は,諸々の商品が等式として現われるような表現様式である.これに対して「商品の価値」と端的に言う場合の「価値」は,無差別な労働力が支出されていることが背景としてある.「現象形式」としての交換関係については,需要と供給の関係で変動する「相対的なもの」として認識されているが,これに対して,端的に「価値」という場合にはその背後に「人間的労働の支出」が前提とされており,その限りで「価値」は相対的ではなくむしろ「労働時間」という単位で測定されうるものとして存在するのである.

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