目次
ライプニッツ『モナドロジー』(承前)
〈事物の要素〉としての「モナド」
(1)エルトマン版(1839年)
(2)ゲルハルト版(1885年)
3 さて,部分がないところには,拡がり〔延長〕も,形も,可分性もない.そしてこうしたモナドは,自然の真の原子であり,ひとことで言えば事物の要素である.
(Leibniz1839: 705,Leibniz1885: 607,谷川・岡部訳13頁)
ここでライプニッツは「モナド」を「自然の真の
この箇所はケーラーのドイツ語訳では次のように翻訳されている.
§3 さて,部分がないところには,縦・横・奥行きの拡がり〔延長〕も,形も,可分性もない.そしてこうしたモナドは,自然の真の〈原子〉であり,ひとことで言えば事物の要素である.
(Leibniz1720: 2-3)
ケーラーのドイツ語訳はフランス語版とほとんど同じ意味だが,「拡がり〔延長〕 étendue 」の意味を,より詳しく具体的に三次元の空間として「縦・横・奥行きの拡がり〔延長〕 eine Ausdehnung in die Länge, Breite und Tieffe 」と訳している.これはケーラーによる補訳だと思われるが,この補訳は適切である.というのも,「モナド」が三次元空間上に存在する物体とは次元の異なるものであるということが,ここでのライプニッツの主張だからである.
文献
- Leibniz, 1720, Des Hn. Gottfried Wilh. von Leibnitz, etc. Lehr-Sätze über die MONADOLOGIE, etc., aus dem Französischen übersetzt von Heinrich Köhlern, Frankfurth und Leipzig. (Bayerische Staatsbibliothek, 2014)
- Leibniz, 1839, God. Guil. Leibnitii opera philosophica quae exstant Latina Gallica Germanica omnia, etc., instruxit Joannes Eduardus Erdmann, Pars altera, Berolini. (British Library, 2018)
- Leibniz, 1885, Die philosophischen Schriften von Gottfried Wilhelm Leibniz, herausgegeben von C. J. Gerhardt, Sechster Band, Berlin. (University of Oxford, 2007)
- ライプニッツ 2019『モナドロジー 他二篇』谷川多佳子・岡部英男訳,岩波書店.