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マルクス『資本論』覚書(12)

目次

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マルクス資本論』(承前)

第一部 資本の生産過程(承前)

商品の多様性と統一性

(1)ドイツ語初版

 それらの交換関係すなわちそれらが交換゠価値として現象するところの形式とは独立に,諸商品はそのために何よりも先ず価値として端的に考察されるべきである⁹.

 使用対象や財貨としては諸々の商品は物体的に多様な諸物である.これに対して,それらの価値が在ることはそれらの統一性をなしている.この統一性は自然からではなく,社会から生じてくる.多様な使用価値において多様に表現されているに過ぎない共通の社会的実体とは——労働である.

(Marx1867: 4)

このパラグラフからドイツ語初版と第二版以降とで記述が大幅に異なっているので,それぞれ分けて考察してみよう.

 「交換関係」とは或る商品と別の商品とを比較した場合の「割合 Proportion」のことであり,それは例えば「一クォーターの小麦」が「x量の靴墨,y量の絹,z量の金等々」との等式によって表現されたのであった.マルクスはこうした交換関係を一旦度外視して,「商品はそのものずばり価値として考察されるべき」だという.このようにマルクスは,いわゆる「現象形式 Erscheinungsform」としての「交換価値」ではなく,より本質的な「価値」そのものを考察すべきだというのである.

 商品は,その物体的な側面から見ると様々な姿形をしており,この点で商品は多様(Verschiedenheit)である.しかし,商品の「価値」について言えば,その外観のもつ多様性とは裏腹に,「労働 Arbeit」という「統一性 Einheit」にその基盤を持っている.つまり「価値」の実体とは「労働」に他ならない.マルクスが「統一性が自然ではなく社会から生じる」という場合,商品のその物体がもっている自然な性質に「価値」の起源があるのではなく,「労働」という社会的な営みの中に「価値」の起源があるということが,含意されている.

原注9

⁹)我々が今後「価値」という語をそれ以上規定せずに用いる場合,それは交換価値について取り扱っている.

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