まだ先行研究で消耗してるの?

真面目に読むな。論理的に読むな。現実的なものは理性的であるだけでなく、実践的でもある。

マルクス「ユダヤ人問題によせて」覚書(2)

目次

sakiya1989.hatenablog.com

マルクスユダヤ人問題によせて」(承前)

ブルーノ・バウアーの著作への書評という形式

マルクスユダヤ人問題によせて」

  1. ブルーノ・バウアー『ユダヤ人問題』ブラウンシュヴァイク、1843年―
  2. ブルーノ・バウアー『今日のユダヤ人とキリスト教徒の自由になりうる能力』、ゲオルク・ヘルヴェーク編『スイスからの21ボーゲン』チューリヒ及びヴィンタートゥーア、1843年、S. 56―71.)―

マルクスユダヤ人問題によせて」は、ブルーノ・バウアー著『ユダヤ人問題』(ブラウンシュヴァイク、1843年)への書評という形式を取っているが、実際のところはB. バウアーの著作を引き合いに出して、B. バウアーを批判しつつも、主眼はB. バウアー批判ではなく、マルクスの当時の主要な関心であった政治経済の問題を展開することであった。ただしマルクスのそのような問題関心が如実に表明されているのは、『独仏年誌』に同時に掲載された『ヘーゲル法哲学批判・序説』の方である。

マルクスが引き合いに出しているブルーノ・バウアー『ユダヤ人問題』(ブラウンシュヴァイク、1843年)の標題紙

 

ブルーノ・バウアー『ユダヤ人問題』目次

 導入

  1. 正しい問題設定
  2. ユダヤ教の批判的考察
  3. ユダヤ教にたいするキリスト教の位置
  4. キリスト教国家におけるユダヤ教徒の地位
  5. 結び
  6. フランス人多数派の宗教との関係におけるフランスのユダヤ教徒
  7. 最後の幻想の解消

(篠原敏昭訳)

マルクスのテクストの中で「解体 Auflösung」「問いの立て方」「キリスト教国家」などの単語が出てくるが、これらは基本的にB. バウアーの議論の文脈を踏まえたものだと言って良い。

 B. バウアーの『ユダヤ人問題』に関して言えば、マルクスの書評以外にも書評が出ている。例えば、「真正社会主義 Wahren Sozialismus」で知られるカール・グリュン(Karl Theodor Ferdinand Grün, 1813-1887)の『ユダヤ人問題:ブルーノ・バウアーへの反論』(ダルムシュタット、1844年)である。

カール・グリュン『ユダヤ人問題:ブルーノ・バウアーへの反論』(ダルムシュタット、1844年)

 

カール・グリュン『ユダヤ人問題:ブルーノ・バウアーへの反論』目次

  1. ドイツ・プロテスタンティズムの合理主義的極致
  2. ブルーノ・バウアーの側からのユダヤ人問題の誤った立て方
  3. 解放の可能性としてのユダヤ教内における批判
  4. キリスト教ユダヤ教
  5. キリスト教国家」と法治国家
  6. 補遺

(植村邦彦・篠原敏昭訳)

(つづく)

文献