目次
カール・シュミット『政治的神学』(承前)
第一章 主権性の定義(承前)
限界概念として考察される主権概念
Diese Definition kann dem Begriff der Souveränität als einem Grenzbegriff allein gerecht werden. Denn Grenzbegriff bedeutet nicht einen konfusen Begriff, wie in der unsaubern Terminologie populärer Literatur, sondern einen Begriff der äußersten Sphäre.
この定義によってのみ、主権概念を限界概念として正当に評価することができる。というのは、限界概念とは、通俗的文献で使用される粗雑な用語のように、曖昧な概念ではなく、極限領域の概念を意味するからである。
(Schmitt2021: 13、権左訳11頁)
ここでなぜシュミットが主権概念を「限界概念 Grenzbegriff」から捉えようとするのかといえば、概念は「限界」においてこそ明晰判明に示されるとシュミットが考えているからであろう。その場合、「限界」とは、それによって白黒ハッキリさせるような、物事の境界線のことを指していることになろう*1。
この点でシュミットの研究は「ポピュラーな文献」とは一線を画していることを示唆するが、この「ポピュラーな文献」とは具体的に何を念頭に置いているのだろうか。
(つづく)
文献
- Schmitt, Carl, 2021, Politische Theologie: Vier Kapitel Zur Lehre Von Der Souveranitat, Elfte, korrigierte Auflage, Duncker & Humblot, Berlin.
- カール・シュミット 2024『政治的神学——主権論四章』権左武志訳,岩波書店.
*1:ヘーゲルの「限界」概念については拙稿「ヘーゲル『精神現象学』覚書(10)」を見よ。