まだ先行研究で消耗してるの?

真面目に読むな。論理的に読むな。現実的なものは理性的であるだけでなく、実践的でもある。

読書前ノート(16)佐藤貴史『ドイツ・ユダヤ思想の光芒』

佐藤貴史『ドイツ・ユダヤ思想の光芒』(岩波書店、2015年)

20世紀ドイツのユダヤ思想

 本書では、主に20世紀のドイツ・ユダヤ人思想家たち——ヘルマン・コーエン(Hermann Cohen, 1842-1918)、マルティン・ブーバー(Martin Buber, 1878-1965)、ゲルショム・ショーレム(Gershom Gerhard Scholem, 1897-1982)、レオ・シュトラウス(Leo Strauss, 1899-1973)——が、ニーチェスピノザという偉大な思想家を参照軸としつつ、取り扱われている。

 ユダヤ人は〈常にすでに〉抑圧された宗教的民族ではあったものの、ヒトラー率いる20世紀のドイツにおいてその抑圧は、ユダヤ思想に対しても特別な影響力を有していたはずである。そうした特殊で非人道的な時代状況の中で、ユダヤ人思想家たちは一体何を思考し、議論してきたのであろうか。マイノリティである〈我々〉の立場からではなく、ユダヤ人自身がどのように考えたかということを把握することがひとつ重要な事柄であるように思われる。本書はその手がかりを与えてくれるのではないだろうか。

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