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ヘーゲル『宗教哲学講義』覚書(2)

目次

sakiya1989.hatenablog.com

ヘーゲル宗教哲学講義』(承前)

対象となる宗教はどのような領域か

     Der Gegenstand ist die Religon, und dieser Gegenstand ist der höchste, absolute; die Region, worin alle Räthsel der Welt gelöst, alle Widersprüche des tiefer sinnenden Gedankens enthüllt sind, alle Schmerzen des Gefühls verstummen; die Region der ewigen Wahrheit, der ewigen Ruhe. -

 対象となるのは宗教である。そしてこの対象は至高の、絶対的なものである。その領域では、世界のすべての謎が解かれ、深淵な成熟した思想のすべての矛盾が明らかになり、感情のすべての痛みが沈黙する、永遠の真理の領域、永遠の休息の領域である。-

(Hegel2021: 3)

ここでは宗教が一般的にどのように捉えられているのかが、ヘーゲルによって表現されている。「至高の、絶対的なもの」とは神のことであろう。

(1)マールハイネケ版(1832年

上の箇所は、マールハイネケ版『宗教哲学講義』「序文」第二パラグラフに組み込まれている。以下に訳出してみよう。

 A. さしあたり、宗教哲学において我々の眼の前にある対象が何であるかを、総じて忘れずに思い出しておかなければならない。この対象とは、最高の絶対的なものであり、世界のすべての謎が解かれ、深淵な成熟した思想のすべての矛盾が明らかになり、感情のすべての苦痛が沈黙する領域、永遠の真理の領域、永遠の静寂の領域である。

(Hegel1832: 3)

マールハイネケ版は、講義録の文章をそのまま再録しているといえる。

(2)B. バウアー版(1840年

バウアー版では別の文章で編集されている。

 第一に、宗教哲学において我々の眼の前にどのような対象があるのか、宗教にかんする我々の表象が何であるのかを、総じて忘れずに思い出しておかなければならない。我々は次のことを知っている、すなわち、我々が宗教の中で時代性から逃れ、宗教が我々の意識にとって、世界のすべての謎が解かれ、深淵な成熟した思想のすべての矛盾が明らかになり、感情のすべての苦痛が沈黙する領域、永遠の真実、永遠の静けさ、永遠の平和の領域であるということを。

(Hegel1840: 3)

バウアー版のヘーゲル宗教哲学講義』は、バウアー流のいわゆる自己意識の哲学の側面から編纂されているといえる。

(つづく)

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