まだ先行研究で消耗してるの?

真面目に読むな。論理的に読むな。現実的なものは理性的であるだけでなく、実践的でもある。

2020-01-01から1年間の記事一覧

アドルノ『音楽社会学序説』覚書(1)

目次 はじめに 『音楽社会学序説』 文献 はじめに このシリーズではアドルノ『音楽社会学序説』(平凡社ライブラリー)を読みます。音楽思想史の一環として。 『音楽社会学序説』 そもそも『音楽社会学序説』(Einleitung in die Musiksoziologie)というタ…

ヴェイパーウェイブからシティポップへ——〈ノスタルジア〉としての音楽

最近、杏里「SHYNESS BOY」という曲が特に気に入っていて、スマートスピーカー(Google Home mini)からこの曲が流れると思わず体が反応することがわかる。この曲が収録されているアルバム『Timely!!』がリリースされた1983年といえば私が生まれるおよそ6年…

ルソー『社会契約論』覚書(8)

目次 ルソー『社会契約論』(承前) 第一編第二章 最初の社会について(承前) グローティウスの事実に基づく推理の仕方 文献 sakiya1989.hatenablog.com ルソー『社会契約論』(承前) 第一編第二章 最初の社会について(承前) グローティウスの事実に基づ…

ルソー『社会契約論』覚書(7)

目次 ルソー『社会契約論』(承前) 第一編第二章 最初の社会について(承前) 家族とのアナロジーにおける政治社会 文献 sakiya1989.hatenablog.com ルソー『社会契約論』(承前) 第一編第二章 最初の社会について(承前) 家族とのアナロジーにおける政治…

ルソー『社会契約論』覚書(6)

目次 ルソー『社会契約論』(承前) 第一編第二章 最初の社会について(承前) 家族から独立して「自己保存」を可能とする「理性」 文献 sakiya1989.hatenablog.com ルソー『社会契約論』(承前) 第一編第二章 最初の社会について(承前) 家族から独立して…

ルソー『社会契約論』覚書(5)

目次 ルソー『社会契約論』(承前) 第一編第二章 最初の社会について ルソーの家族論 〈家族-1〉における〈母親〉の欠如 〈家族-2〉における「約束」の契機 文献 sakiya1989.hatenablog.com ルソー『社会契約論』(承前) 第一編第二章 最初の社会について …

ルソー『社会契約論』覚書(4)

目次 ルソー『社会契約論』(承前) 第一編第一章 第一編の主題 二つの喩え,二つの問い 「取り決め」に基づく「社会秩序」とその「権利」 文献 sakiya1989.hatenablog.com ルソー『社会契約論』(承前) 第一編第一章 第一編の主題 二つの喩え,二つの問い …

哲学史・思想史における〈男性中心主義〉の問題

目次 はじめに ブログ訪問ユーザーの男女比 時系列(縦棒グラフ) 2020年5月(円グラフ) 2020年1月(円グラフ) 2018年3月(円グラフ) ジェンダーバイアスによる〈思考の死角〉 哲学史・思想史における〈男性中心主義〉の問題 女性の手掛けた作品のうちに…

ヴィーコ『新しい学』覚書(6)

目次 ヴィーコ『新しい学』(承前) 著作の観念(承前) ヘラクレスとネメアの獅子 文献 sakiya1989.hatenablog.com ヴィーコ『新しい学』(承前) 著作の観念(承前) ヘラクレスとネメアの獅子 地球儀を取り巻いている黄道帯の中で,獅子と処女の二宮だけ…

ヴィーコ『新しい学』覚書(5)

目次 ヴィーコ『新しい学』(承前) 著作の観念(承前) アリストテレス政治学とヴィーコの国家神学 文献 sakiya1989.hatenablog.com ヴィーコ『新しい学』(承前) 著作の観念(承前) アリストテレス政治学とヴィーコの国家神学 しかし,この部分にたいし…

ヴィーコ『新しい学』覚書(4)

目次 ヴィーコ『新しい学』(承前) 著作の観念(承前) 神を観照する仕方について 文献 sakiya1989.hatenablog.com ヴィーコ『新しい学』(承前) 著作の観念(承前) 神を観照する仕方について ヴィーコは続けて「神」について言及している. すなわち,神…

スピノザ『エチカ』覚書(10)

目次 スピノザ『エチカ』(承前) 第一部 神について(承前) 自然と実体 「定義三および公理六」? 文献 sakiya1989.hatenablog.com スピノザ『エチカ』(承前) 第一部 神について(承前) 自然と実体 『エチカ』第一部定理五では「自然」と「実体」との関…

スピノザ『エチカ』覚書(9)

目次 スピノザ『エチカ』(承前) 第一部 神について(承前) 物を区別するもの 知性の外部は存在するか 「物」と「実体」の関係 文献 sakiya1989.hatenablog.com スピノザ『エチカ』(承前) 第一部 神について(承前) 物を区別するもの 前回の【定理三】…

スピノザ『エチカ』覚書(8)

目次 スピノザ『エチカ』(承前) 第一部 神について(承前) 「物」と「実体」 Q.E.D. 文献 sakiya1989.hatenablog.com スピノザ『エチカ』(承前) 第一部 神について(承前) 「物」と「実体」 【定理三】では共通点と因果の関係について述べられている.…

情愛・努力・死——『鬼滅の刃』の三原則

目次 『鬼滅の刃』の三原則 情愛 努力 死 『鬼滅の刃』の三原則 『鬼滅の刃(きめつのやいば)』(吾峠呼世晴(ごとうげこよはる))のアニメの続きが知りたくて、コミックス7巻以降をKindleで買って読んでみた。 もし「子供に『鬼滅の刃』のアニメの続きを…

スピノザ『エチカ』覚書(7)

目次 スピノザ『エチカ』(承前) 第一部 神について(承前) 異なった属性を有する二つの実体 二つの実体を知覚する知性 文献 sakiya1989.hatenablog.com スピノザ『エチカ』(承前) 第一部 神について(承前) 異なった属性を有する二つの実体 【定理二】…

スピノザ『エチカ』覚書(6)

目次 スピノザ『エチカ』(承前) 第一部 神について(承前) 定理 アプリオリな「実体」 文献 sakiya1989.hatenablog.com スピノザ『エチカ』(承前) 第一部 神について(承前) 定理 以上の「定義」と「公理」を踏まえた上で「定理 Propositio 」が述べら…

スピノザ『エチカ』覚書(5)

目次 スピノザ『エチカ』(承前) 第一部 神について(承前) 公理 存在の二つの様式 概念規定 原因と結果 因果と認識 相互認識と概念 真の観念と被観念対象 非実在概念の本質 文献 sakiya1989.hatenablog.com スピノザ『エチカ』(承前) 第一部 神について…

ルソー『社会契約論』覚書(3)

目次 ルソー『社会契約論』(承前) 第一編 文献 sakiya1989.hatenablog.com ルソー『社会契約論』(承前) 第一編 『社会契約論』は四つの編(livre)から成り立っている. 目次によれば,第一編の内容は「ここでは,いかにして人間が自然状態から社会状態…

スピノザ『エチカ』覚書(4)

目次 スピノザ『エチカ』(承前) 第一部 神について(承前) 「類」概念の有限性と規定性 「実体」概念 「属性」と構成物 「様態」概念と「変状」としての他在 スピノザの「神」理解 自律と他律 永遠=存在 文献 sakiya1989.hatenablog.com スピノザ『エチ…

スピノザ『エチカ』覚書(3)

目次 スピノザ『エチカ』(承前) 第一部 神について(承前) 「私」という主語,抹消された主体 「自己原因」の解釈と「神の存在証明」 文献 sakiya1989.hatenablog.com スピノザ『エチカ』(承前) 第一部 神について(承前) 「定義」の内容についてもう…

スピノザ『エチカ』覚書(2)

目次 スピノザ『エチカ』(承前) 第一部 神について 定義 隔字体のない原文 「定義」における「幾何学的秩序」 文献 sakiya1989.hatenablog.com スピノザ『エチカ』(承前) 第一部 神について 定義 定義 一 自己原因とは,その本質が存在を含むもの,ある…

スピノザ『エチカ』覚書(1)

目次 はじめに スピノザ『エチカ』 幾何学的秩序 スピノザ以前のユークリッド幾何学の哲学者への影響——ホッブズの場合 スピノザと幾何学的秩序 幾何学の発展——ユークリッド幾何学から非ユークリッド幾何学へ 本書の部門構成 文献 はじめに 本稿ではスピノザ…

ポスト・ヒューマン/サスティナブル・ウォー/シンクポル/自由は屈従——『攻殻機動隊 SAC_2045』(シーズン1)覚書

目次 「ポスト・ヒューマン」とシンギュラリティ 「サスティナブル・ウォー」と資産価値 「シンクポル」とネットリンチ 「自由は屈従」と対米従属 おわりに Netflixで『攻殻機動隊 SAC_2045』シーズン1(第1〜12話)を観たので、感想を書いておきたい。 www.…

コロナ以後、祭礼は野蛮である

はじめに 今回は「コロナ以後、祭礼は野蛮である」ということについて考えたい。 もともとは「アウシュヴィッツ以後、詩を書くことは野蛮である」*1というアドルノの言葉から来ている。こちらははるかに重々しい内容を持っている。藤野寛の解釈を引用しよう…

サイード『オリエンタリズム』覚書(4)

目次 サイード『オリエンタリズム』(承前) 序説(二)(承前) 〈オリエント〉に関する三つの留保(その一) 〈オリエント〉についての諸観念の星座的布置 文献 sakiya1989.hatenablog.com サイード『オリエンタリズム』(承前) 序説(二)(承前) 〈オ…

ヴィーコ『新しい学』覚書(3)

目次 ヴィーコ『新しい学』(承前) 著作の観念(承前) 哲学者たちと形而上学の位置付けの違い 文献 sakiya1989.hatenablog.com ヴィーコ『新しい学』(承前) 著作の観念(承前) 哲学者たちと形而上学の位置付けの違い この摂理の顔を介して,形而上学は…

ルソー『社会契約論』覚書(2)

目次 ルソー『社会契約論』(承前) まえがき 『社会契約論』と『ジュネーヴ草稿』 文献 sakiya1989.hatenablog.com ルソー『社会契約論』(承前) まえがき 『社会契約論』と『ジュネーヴ草稿』 ルソーは『社会契約論』のはじめに,次のような「まえがき(…

ルソー『社会契約論』覚書(1)

目次 はじめに ルソー『社会契約論』 異版について ドイツで印刷された海賊版 女神像の初版 八つ折り版の初版 ジュネーヴの市民 ウェルギリウス『アエネーイス』 文献 はじめに 本稿では,ルソー『社会契約論』(桑原武夫・前川貞次郎訳,岩波文庫)の読解を…

サイード『オリエンタリズム』覚書(3)

目次 序説(二) 「オリエント」とヴィーコの「原理」 文献 sakiya1989.hatenablog.com 序説(二) 「オリエント」とヴィーコの「原理」 サイードはヴィーコの「原理」を「オリエント」の解明へと応用する。 I have begun with the assumption that the Orie…