目次
ルソー『社会契約論』(承前)
第一編第二章 最初の社会について(承前)
家族から独立して「自己保存」を可能とする「理性」
前回はルソーの論ずる家族の二つの形態について見てきた.続けてルソーは人間の自己保存について語る.
両者に共通のこの自由は,人間の本性の結果である.人間の最初のおきては,自己保存をはかることであり,その第一の配慮は自分自身にたいする配慮である.そして,人間は,理性の年令に達するやいなや,彼のみが自己保存に適当ないろいろな手段の判定者となるから,そのことによって自分自身の主人となる.
(Rousseau1762: 5-6,訳16頁)
〈家族-1〉は,子どもたちが大人に達するまでの共同体であった.この共同体は彼らの「自己保存」を目的とするものである.
ところで前のパラグラフでルソーは「子どもたちは父親に服従する義務をまぬがれ,父親は子どもたちの世話をする義務をまぬがれて,両者ひとしく,ふたたび独立するようになる」と述べていたが,子どもたちがこのように自立する線引きはどこにあるのだろうか.その鍵は「理性」にあるだろう.「人間は,理性の年令に達するやいなや,彼のみが自己保存に適当ないろいろな手段の判定者となるから,そのことによって自分自身の主人となる」.つまり父親の助けを借りずとも自分自身で自己保存が可能になった時が自立のタイミングである.