まだ先行研究で消耗してるの?

真面目に読むな。論理的に読むな。現実的なものは理性的であるだけでなく、実践的でもある。

読書メモ

読書前ノート(11)小松原織香『当事者は嘘をつく』

小松原織香『当事者は嘘をつく』(筑摩書房、2022年) 目次 小松原織香『当事者は嘘をつく』(筑摩書房、2022年) はじめに 〈性暴力〉とは何か 「刑事司法の枠組み」から外れる〈性暴力〉 「彼」の発言と振る舞いの矛盾 ドーナツの「穴」のような「語り得(…

読書前ノート(10)ジョルジョ・アガンベン『身体の使用』

ジョルジョ・アガンベン『身体の使用 脱構成的可能態の理論のために』(上村忠男訳、みすず書房、2016年) 筆者が本書を手に取ったのは、少なからずヘーゲル法哲学の第一部「抽象法」の解釈に役立てるためであった。ヘーゲルは次のように述べている。 【§59…

読書前ノート(9)平野啓一郎『私とは何か——「個人」から「分人」へ』

平野啓一郎『私とは何か——「個人」から「分人」へ』(講談社、2021年) メタバースと〈分人主義〉 メタバース関連書籍で何度か小説家平野啓一郎さんの〈分人主義〉について言及されていたので、本書を手に取ってみた。まずは〈分人〉という捉え方についてみ…

読書前ノート(8)バーチャル美少女ねむ『メタバース進化論』

バーチャル美少女ねむ『メタバース進化論——仮想現実の荒野に芽吹く「解放」と「創造」の新世界』(技術評論社、2022年) それは参与観察さえ〈超えて〉いる 今年最初で最大の衝撃の書かもしれない。私が本書を手にしたのは、今後のトレンドを示すための社内…

読書前ノート(7)梅田百合香『ホッブズ リヴァイアサン シリーズ世界の思想』

梅田百合香『ホッブズ リヴァイアサン シリーズ世界の思想』(KADOKAWA、2022年) 「シリーズ世界の思想」という企画を立ち上げたのは一体どのような人物なのか、ということが気になっている。というのも、各思想家を担当する執筆者の人選が抜群に優れている…

読書前ノート(6)佐藤直樹『基礎から身につく「大人の教養」』/カート・セリグマン『魔法』

目次 佐藤直樹『基礎から身につく「大人の教養」 東京藝大で教わる西洋美術の見かた』(世界文化社、2021年) カート・セリグマン『魔法 その歴史と正体』(平田寛・澤井繁男訳、平凡社、2021年) 佐藤直樹『基礎から身につく「大人の教養」 東京藝大で教わ…

読書前ノート(5)イアン・ハッキング『数学はなぜ哲学の問題になるのか』

イアン・ハッキング『数学はなぜ哲学の問題になるのか』(金子洋之・大西琢朗訳、森北出版、2017年) 最近興味を持っているのが、数学と哲学の関係である。かの偉大な哲学者プラトンは、自身の設けたアカデメイアという学園において、算術や幾何学、天文学を…

読書前ノート(4)蛯谷敏『レゴ——競争にも模倣にも負けない世界一ブランドの育て方』

蛯谷敏『レゴ——競争にも模倣にも負けない世界一ブランドの育て方』(ダイヤモンド社、2021年) 「ソフトバンクでは「レゴシリアスプレイ」を活用している」という記事を読まなかったら、おそらく私が本書を手に取ることは無かっただろう。そもそも私は生まれ…

読書前ノート(3)前田鎌利『課長2.0 リモートワーク時代の新しいマネージャーの思考法』

前田鎌利『課長2.0 リモートワーク時代の新しいマネージャーの思考法』(ダイヤモンド社、2021年) 前田鎌利さんはソフトバンクのOBであり、本書ではその頃の経験に基づいてマネージャーのノウハウが語られている。東浩紀『一般意志2.0』を彷彿させるタイト…

読書前ノート(2)岩波哲男『ヘーゲル宗教哲学入門』

岩波哲男『ヘーゲル宗教哲学入門』(理想社、2014年) 神保町の三省堂書店でたまたま本書を見つけて手に取った。ヘーゲルの著作の背後には、常に宗教性(とりわけキリスト教の)が垣間見える。それは『精神現象学』であれ、『論理学』であれ、『エンツュクロ…

読書前ノート(1)赤松明彦『『バガヴァッド・ギーター』』/臼杵陽『大川周明』/エドワード・J・ワッツ『ヒュパティア』

目次 読書前ノート 赤松明彦『『バガヴァッド・ギーター』——神に人の苦悩は理解できるのか?』(岩波書店、2008年) 臼杵陽『大川周明 イスラームと天皇のはざまで』(青土社、2010年) エドワード・J・ワッツ『ヒュパティア 後期ローマ帝国の女性知識人』(…

アマゾンについての新刊3冊

昨日、アマゾンについての新刊を買いました。 目次 佐藤将之『アマゾンのすごいルール』(宝島社) 鈴木康弘『アマゾンエフェクト!』(プレジデント社) GAFAリサーチ・ジャパン『アマゾンがわかる』(ソシム) まとめ 文献 佐藤将之『アマゾンのすごいルー…

ヘーゲルの「正義」論

目次 「正義」と「平等」 iusの分離としての「権利(Recht)」と「正義(Gerechtigkeit)」 文献 今回は、ヘーゲル『法の哲学』におけるヘーゲルの正義論について書きたいと思います。 sakiya1989.hatenablog.com 「正義」と「平等」 ヘーゲルの『法の哲学』…

【読書メモ】神田昌典『新装版 非常識な成功法則』(フォレスト出版)

神田昌典『新装版 非常識な成功法則』(フォレスト出版) は、結構度肝を抜かれる内容です。確かに著者が「この本は私が一番書きたくなかった本」というのは頷けます。でも、だからこそ使えるノウハウが詰まっています。読んだのはもう数ヶ月前ですが、めち…

【読書メモ】フランシス・ギース『中世ヨーロッパの騎士』(椎野淳訳、講談社学術文庫、2017年)

以前、「セールスマンとは中世の騎士のようなもの」という記事を書きました。 sakiya1989.hatenablog.com この記事を書いた後で、そもそも「中世の騎士」ってどんな存在なんだっけ?ということが頭の片隅で常に気になっていました。 よくよく考えてみると、…

【読書メモ】マーク・ジェフリー『データ・ドリブン・マーケティング』

マーク・ジェフリー『データ・ドリブン・マーケティング』(ダイヤモンド社、2017年)を読んでみた。 邦訳の180頁にこんなくだりがあった。 ジェフリーは携帯電話が故障してしまったため、朝早くケータイショップに行ったが、店員は「45分待ちです」と譲らず…

【読書メモ】伊賀泰代『生産性』

久々の更新です。 今月は忙しくて、全然ブログ更新できませんでした。今回の記事もメモのような感じです。 伊賀泰代『生産性』ダイヤモンド社、2016年 昨日、立ち読みしたらビビっときた文章があったので、即買っちゃいました。下に 引用します。 「マッキン…

最近読んだ本とか(企業、経営、ビジネス書)

今日はなんとなく僕が最近(ここ半年ぐらいで)読んだ本を一部リストアップしておきます。読んだ本全て挙げようと思ったのですが、意外に数が多くて一度に書ききれないです。あくまで自分の整理のためですので、カテゴリー別にピックアップします。 余談です…

【読書メモ】ドゥルーズ&ガタリ『千のプラトー』にsujet(主体、主題)はあるのか?

今日はダヴィッド・ラプジャードの『ドゥルーズ 常軌を逸脱する運動』について書きます。この本は、ドゥルーズのあらゆる著作を一冊の中に凝縮したような本です。たった一冊なのに、非常によくまとまっています。しかもただまとめるだけでなく、ドゥルーズの…

【読書メモ】ショーペンハウアーの「オカルト的性質」について

今日はショーペンハウアーの「オカルト的性質」について書きます。 昨日、ショーペンハウアーの『意志と表象としての世界』を読んでいたら、qualitas occulutaっていう言葉が出てきました。西尾幹二訳では「隠れた特性」と訳されています。 僕はocculutaとい…