まだ先行研究で消耗してるの?

真面目に読むな。論理的に読むな。現実的なものは理性的であるだけでなく、実践的でもある。

読書前ノート(4)蛯谷敏『レゴ——競争にも模倣にも負けない世界一ブランドの育て方』

蛯谷敏『レゴ——競争にも模倣にも負けない世界一ブランドの育て方』(ダイヤモンド社、2021年)

 「ソフトバンクでは「レゴシリアスプレイ」を活用している」という記事を読まなかったら、おそらく私が本書を手に取ることは無かっただろう。そもそも私は生まれてこの方「レゴ」で遊んだこともないし、「レゴシリアスプレイ」については全く知らなかったのだ。——というか、こんな面白そうな取組やってるなら教えてくれよ。そして僕も混ぜてくれよな。なに、お呼びでないって?——それはさておき、「レゴシリアスプレイ」を使って考えを実在化することは、ロジック偏重による思考の歪みを解消するのに役立つはずだ。というのも、「レゴ」は単なるロジックでなく、その手でもって実在的世界の中で構築される作品だからである。庵野秀明が『シン・エヴァンゲリオン』でプリウィズを用いて最適なカットを多角的に検討しようとしたように、立体的に構築されたレゴはロジックだけでは到達しない様々な見方と豊かな発想をもたらすであろう。

 ところで、最近「ナノブロック nanoblock 」という「レゴ」の競合商品を見かける機会があった。「ナノブロック」はその名の通り、ブロックの大きさが最小のパーツで楽しめる玩具である。「レゴ」も「ナノブロック」もマインクラフトのようにイメージを立体的に再現可能であるが、「レゴ」がスピード感を持って概念的に組み立て可能であるのに対して、「ナノブロック」はパーツが細分化されていることによって組み立てるのに時間がかかる。それゆえ、「レゴシリアスプレイ」が成り立つのは、「レゴ」のパーツの大きさが大き過ぎず小さ過ぎないからだと考えられる。