まだ先行研究で消耗してるの?

真面目に読むな。論理的に読むな。現実的なものは理性的であるだけでなく、実践的でもある。

ヘーゲル『論理の学』覚書(1)

目次

はじめに

 本稿ではヘーゲル『論理の学』(山口祐弘訳,作品社)を読む.

 ヘーゲルの『論理の学』(Wissenschaft der Logik)は,従来『大論理学』と呼ばれてきた.しかしながら,厳密に言えば,ヘーゲルの著作のうちに『大論理学』というタイトルは存在しない.

 まずヘーゲルの『論理の学』第1版は,1812年から1816年にかけて三分冊の書物として刊行された(Hegel1812; Hegel1813; Hegel1816).後に『論理の学』第2版「存在論」が,ヘーゲルの亡くなった翌年の1832年に出版された(Hegel1832).

 ヘーゲルの『哲学的諸学問のエンツュクロペディー要綱』(Encyklopädie der philosophischen Wissenschaften im Grundrisse, 1817. いわゆる『ハイデルベルク・エンツュクロペディー』)における体系の一部門として「論理の学」が収められた.後に『エンツュクロペディー』第2版(1827年)および第3版(1830年)が出版されている.

 後者『エンツュクロペディー』に収められた「論理の学」がいわゆる『小論理学』であり,前者『論理の学』がいわゆる『大論理学』である.ここでは主に『大論理学』を取り扱う.

ヘーゲル『論理の学』

『論理の学』の邦訳について

 本書はこれまでに,ヘーゲル論理学の先駆的な研究者としても著名な武市健人たけちたてひと(1901-1986)による岩波書店ヘーゲル全集の邦訳(ヘーゲル2002=2016),そして亡くなるまでライフワークとして取り組まれたとされる寺沢恒信(1919-1998)による邦訳(ヘーゲル1977)を通じて,長らく親しまれてきた.

 比較的新しいものとしては,こちらもヘーゲル論理学を専門とする山口祐弘(1944-)による邦訳(作品社)がある(ヘーゲル2012).

 最新の邦訳は,新全集版を底本に日本で再編集された現在刊行中の『ヘーゲル全集』(知泉書館)の中に収録されている(ヘーゲル2020).

『論理の学』「存在論」第1版と第2版における表題紙の違い

 『論理の学』「存在論」第1版と第2版の表題紙の違いについて確認しておく.

ヘーゲル『論理の学』「存在論」第1版,表題紙)

ヘーゲル『論理の学』「存在論」第2版,表題紙)

第1版の出版地はニュルンベルク(Nürnberg)であり,第2版の出版地はシュトゥットガルトおよびテュービンゲン(Stuttgart und Tübingen)となっている.しかし,山口祐弘訳(作品社)の「凡例」には次のように書いてある.

一 本書は,Georg Wilhelm Friedrich Hegel, Wissenschaft der Logik, Erster Band, Die objektive Logik, Erstes Buch, Die Lehre vom Sein, Nürnberg 1832 の翻訳である.

ヘーゲル2012: ⅸ)

以下の二点を指摘しておきたい.

  • もし山口訳が『論理の学』第2版(1832年)を底本としているならば,"Erster Band, Die objektive Logik, Erstes Buch, Die Lehre vom Sein"ではなく,"Erster Theil, Die objektive Logik, Erster Band, die Lehre vom Seyn(Sein)"としなければならないのではないだろうか.
  • もし山口訳が『論理の学』第2版(1832年)を底本としているなら,出版地は Nürnberg ではなく Stuttgart und Tübingen ではないだろうか.

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