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ヘーゲル『法の哲学』覚書(4)

目次

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ヘーゲル『法の哲学』(承前)

序言(承前)

『要綱』における「方法」の問題

 この要綱が,さしあたっては,ここで指導的な役割を果たしている方法のゆえに,普通の概論とは異なっていることはたしかである.しかし,ひとつの素材から他の素材へと進む哲学的な仕方や,学問的証明の哲学的な仕方,一般的にいって思弁的認識の仕方が本質的に他の認識の仕方とは異なるということは,ここに前提とされていることである.こうした相違の必然性を洞察することだけが,われわれの時代において,哲学を,それが転落した不名誉な頽落から救いだすことができるのである.

(Hegel1820: ⅳ-ⅴ,上妻ほか訳(上)12頁)

ヘーゲルの「要綱 Grundriss 」と通常の「概論 Compendium 」が異なることは前回見た通りである.では両者の違いはどのような点にあるのだろうか.その違いは「方法 Methode 」の違いである.

 ヘーゲルは「ひとつの素材から他の素材へと進む哲学的な仕方や,学問的証明の哲学的な仕方,一般的にいって思弁的認識の仕方が本質的に他の認識の仕方とは異なる」と述べ,このことは本書では「前提とされている」という.この「前提とされている」仕方は,一体どこで述べられているのだろうか.この同じパラグラフの後半でヘーゲルは自身の『論理の学』(Wissenschaft der Logik)を取り上げているから,そこにヘーゲルの「哲学的な仕方」が示されていると言えるだろう.

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