目次
はじめに
本稿では,トマス・ホッブズ(Thomas Hobbes, 1588–1679)の主著『リヴァイアサン』(Leviathan, 1651)を読む.
『リヴァイアサン』のタイトルについて
Googleブックスで『リヴァイアサン』初版を確認してみると、表紙には「マームズベリーのトマス・ホッブズ著『リヴァイアサン、すなわち、教会的および市民的
「質料 Matter 」と「形相 Forme 」に「力 Power 」を並置したところにホッブズの妙味がある。ホッブズはしばしばアリストテレスを批判しているが、「質料」と「形相」はアリストテレスの術語として知られている。それらにホッブズが「力」を加え並べたのは、ガリレオ以後の自然哲学、つまり力学的世界観の導入が背景にあるのではないだろうか。あるいは同じことであるが、Powerは、本書が政治哲学の書物として受け入れられている限りではもっぱら「権力」として理解されているのだが、しかし同時に本書が自然学との連関を示すものとしても理解されうるのではないだろうか。