目次
ホッブズ『リヴァイアサン』(承前)
序説(承前)
本書の構成
この人工的人間の本性を叙述するために、私は、
第一に、それの素材 Matter と製作者、それらはともに人間である。
第二に、どのようにして、どういう諸信約によって、それはつくられるか、主権者の諸権利および正当な権力あるいは権威 Authority とは何か、そして、何がそれを維持し、解体するか。
第三に、キリスト教的コモン - ウェルスとは何か。
さいごに、暗黒の王国とは何か。を考察したい。
(Hobbes1651: 2, 訳38頁)
ここで「第一に、…第二に、…第三に、…さいごに、…」とあるのは、ちょうど『リヴァイアサン』の四部構成に対応している(第一部「人間について」、第二部「コモン - ウェルスについて」、第三部「キリスト教のコモン - ウェルスについて」、第四部「暗黒の王国」)。
「リヴァイアサン」は「人工的人間」であるが、それが人工的に模倣されるためには、さしあたって模倣される「人間」がどういうものなのかが明らかにされなければならない。本書第一部「人間について」でそれが示される。
第一部で模倣されるべき「人間」の機構が示されたことで、次に第二部では「いかにして How 」その人間を模倣するのかが課題となる。つまり人間がどうやって生まれ、生活し、死んでいくのかという生命のプロセスと同様に、リヴァイアサンの生成から消滅までのプロセスが第二部で示される。
『リヴァイアサン』のサブタイトルは「教会的および市民的コモンウェルスの質料、形相、および力 the Matter, Forme, & Power of a Common-wealth Ecclesiastical and Civill 」であるが、このサブタイトルは本書の構成を示している。「素材=質料 Matter 」が主に扱われるのが第一部であるとすれば、「形式=形相 Forme 」と「権力=力 Power 」が主に扱われるのは第二部であるといえる。そして第二部で「市民的コモンウェルス」について扱った後に、第三部では「教会的コモンウェルス」が扱われる次第である。