まだ先行研究で消耗してるの?

真面目に読むな。論理的に読むな。現実的なものは理性的であるだけでなく、実践的でもある。

『共産党宣言』覚書(4)

目次

sakiya1989.hatenablog.com

共産党宣言』初版(23ページ本)(承前)

第一章 ブルジョアとプロレタリア(承前)

階級対立の単純化という近代市民社会の特徴

 歴史の早い諸時期には,われわれは,ほとんどどこでも社会が種々の身分に,社会的地位のさまざまの段階に,完全にわかれているのを見出す.古ローマにおいては,都市貴族,騎兵,平民,奴隷に,中世においては,封建君主,家臣,ギルド組合員,職人,農奴にわかれていた.なおそのうえ,これらの階級の一つ一つのなかが,たいていまた別々の階層にわかれていた.

 封建社会の没落から生れた近代ブルジョア社会は,階級対立を廃止しなかった.この社会はただ,あたらしい階級を,圧制のあたらしい条件を,闘争のあたらしい形態を,旧いものとおきかえたにすぎない.

 しかしわれわれの時代,すなわちブルジョア階級の時代は,階級対立を単純にしたという特徴をもっている.全社会は,敵対する二大陣営,たがいに直接に対立する二大階級——ブルジョア階級とプロレタリア階級に,だんだんとわかれていく.

(Marx et al. 1848: 3-4,大内・向坂訳42頁)

マルクスにおける社会の時代区分には,大きく分けて三つある.第一に,古代ローマにみられるような古典古代の社会であり,第二に,中世の封建社会であり,第三に,近代市民社会である.ここでは古典古代の社会から中世の封建社会までは社会階級が多様に存在したものの,近代市民社会においては「ブルジョア階級とプロレタリア階級」という二大階級に二極化していくという特徴が示されている.

 どうもマルクスには,身分や階級の二項対立が高度に二極化する中で行くところまで行くと最終的に統一を果たすという通俗的弁証法的発想があったように思われる.その萌芽は既に『ヘーゲル国法論批判』(1843)のうちに看取される.1843〜44年頃のマルクスは主に政治的市民(citoyen)と経済的市民(bourgeois)の分離とその統一が目指されていた.

(つづく)

文献