目次
マルクス『資本論』(承前)
第一部 資本の生産過程(承前)
マルクスと労働価値説
(1)ドイツ語初版
我々は今や価値の実体を知っている.それは労働である.我々はその〔価値の〕大きさの尺度を知っている.それは労働時間である.その〔価値の〕形式,このことは価値に交換‐価値という印を押すのであるが,この形式を分析するのはまだこれからのことである.しかし,まずその前に,すでに見いだされた諸規定をもう少し詳しく展開しなければならない.
(Marx1867: 6,『資本論①』81頁,訳は改めた)
(2)ドイツ語第二版
該当パラグラフなし.
(3)フランス語版
我々は今や価値の実体を知っている.それは労働である.我々はその〔労働の〕量の尺度を知っている.それは労働の持続時間である.
(Marx1872b: 15)
(4)ドイツ語第三版
該当パラグラフなし.
ここでマルクスが「我々は今や価値の実体を知っている.それは労働である」と述べるとき,このことはマルクスが労働価値説の立場を取っていることを端的に示している.
このパラグラフは,前回のパラグラフの内容の要約と今後のパラグラフの方向性を示す中継地点のような役割を持っている.このパラグラフはドイツ語初版にしか存在せず,ドイツ語第二版以降では削除されている.もしかすると,このパラグラフでは実質的に内容が進展していない以上,本書の論理展開においてはこのパラグラフが不要のものと見做され,ドイツ語第二版以降では削除されたのかもしれない.