まだ先行研究で消耗してるの?

真面目に読むな。論理的に読むな。現実的なものは理性的であるだけでなく、実践的でもある。

〔翻訳〕ニコラス・バーボン『より軽い新貨幣の鋳造に関する論究』(16)

目次

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ニコラス・バーボン『より軽い新貨幣の鋳造に関する論究』(承前)

序文

This Question, Whether it is for the Interest of England, at this time, to New-Coin their Clipt-Money, according to the Old Standard both for Weight and Fineness, or to Coin it somewhat Lighter? has been, of late, the business of the Press, and the common subject of Debate.

イングランドの利益のために,この時期に,自国の盗削貨幣を,重量と純度の両方の旧基準に従って,新たに鋳造するのか,それとも幾分か軽量化して鋳造するのか」というこの問題は,最近では報道機関の仕事であり,共通の議題となっている.

(Barbon1696: A2)

この問題についての議論はロック=ラウンズ論争として知られている.すなわち財務次官ウィリアム・ラウンズ(William Lowndes, 1652-1724)と哲学者ジョン・ロック(John Locke, 1632-1704)とのあいだの貨幣論争である.

 「盗削貨幣 Clipt-Money 」とは,人々が硬貨からナイフなどで削り取って銀の含有量が低下した硬貨のことを指している.コインの盗削について平山健二郎(1952-)は次のように説明している.

国民の側でもコインをこすりあわせて重量を減らしたり,ナイフで削ったりして「盗削」(clipping)をしていた.この盗削のためコインの重量は時間とともに次第に減少し,あるべき重さの7割,8割しかないという事態が頻繁に起きていた.これらの軽いコインも,その表面価値(extrinsic value)で流通していた.この事実は,貨幣が必ずしもその本質的な商品価値(intrinsic value)によって規定されるのではなく,人々の信認さえあれば,架空の価値を持つものとして流通することを実証しているという意味で興味深い事実である.

平山2006:80-81)

このように「盗削貨幣」が横行していたがゆえにイングランドでは改鋳の議論がなされていたのであり,バーボンもまたその議論に参加したのである.

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