目次
ニコラス・バーボン『より軽い新貨幣の鋳造に関する論究』(承前)
富、および諸事物の価値について(承前)
「価値」と「効能」、あるいは「交換価値」と「使用価値」
価値と効能の区別がつかないことほど、この論争を悩ませるものはない。
(Barbon1696: 6)
バーボンは諸物の「価値 Value 」と「効能 Vertue 」を区別する。
「価値」とは、次のパラグラフで示されているように、「諸事物の価格 Price 」のことである。これを「交換価値」として理解しても差し支えないだろう。
これに対して「効能 Vertue 」とは、諸物の持っている使用上の効力のことだろう。マルクスはこれを「使用価値」として理解している(『資本論』第一巻)。
価値とは諸事物の価格に過ぎない。それは決して確固たるものではあり得ない。なぜなら、〔もしそうであれば〕それはいつでもどこでも同一の価値でなくてはならないからである。したがって、どんな事物も内在的価値を持ち得ない。(Barbon1696: 6)
バーボンは諸事物が「内在的価値 Intrinsick Value 」を持つことを認めていない。というのも、諸事物が「内在的価値」を持つとすれば、その価値は外部環境によって左右されることがないので、固定化されるはずであるが、実際にはその価値(=価格)は供給量に応じて変動するからである。