目次
ニコラス・バーボン『より軽い新貨幣の鋳造に関する論究』(承前)
富、および諸事物の価値について(承前)
「内在的効能」の普遍性
だが、諸事物はそれ自身のうちに、すべての場所で同一の効能を有する内在的効能を有している。鉄を引きつける天然磁石や、香草や麻薬に付属するいくつかの性質、ある下剤、ある利尿剤などのように。しかし、これらの諸物がたとえ大きな効能を持っていても、それらが豊富な場所か希少な場所かによって、価値や価格が小さかったり、あるいは全くないということもあるかもしれない。赤い刺草 のように、止血するのに優れた効能があるものの、しかしここではそれはその豊富さから無価値な雑草である。そして、香辛料や麻薬も、それら自身の生まれ故郷では何の価値もなく、ふつうの低木や雑草のようなものであるが、我々にとっては大きな価値があり、どちらの場所でも同一の優れた内在的効能がある。(Barbon1696: 6-7)
バーボンは諸事物がその「内在的価値 Intrinsick Value 」を有することを認めないものの、その「内在的効能 Intrinsick Value 」については認めている。
「内在的効能」の特徴は、同じ効力が場所を問わずどこでも通用する点にある。
「赤い刺草 Red-Nettle 」というのは、おそらくアカソ(赤麻、Boehmeria tricuspis、イラクサ科、カラムシ属)のことであろう。アカソはその茎の繊維の丈夫さゆえに、その繊維を取り出して古代より布として織られるのに用いられてきたという。
普通の諸事物には何の価値もない。男が蒐集の目的で保有していたようなものに支払いたいと思う男はいないからである。
(Barbon1696: 7)
たとえば河原に落ちている石ころとか、何でもない物を収集する人がいるかもしれない。それは収集するその人にとっては喜びかもしれないが、他の人にとっては無価値である。