目次
ニコラス・バーボン『より軽い新貨幣の鋳造に関する論究』(承前)
富,および諸物の価値について(完)
バーボンの五つの格率
That which I have endeavour'd to prove in this Discourse, of Riches, and the Value of Things, are these Five several Maxims, which I have here set together, because I shall have occasion to make use of them hereafter. viz.
- That nothing has a Price or Value in it self.
- That the Price or Value of every thing arises from the occasion or use for it.
- That Plenty and Scarcity, in respect to their occasion, makes things of greater or lesser Value.
- That the Plenty or Scarcity of one Commodity do's not alter the Prices of other Commodities which are not for the same uses.
- That in Trade and Commerce there is no difference in Commodities when their Values are equal; that is, Twenty shillings worth of Lead or Iron to some Merchants is the same as Twenty shillings in Silver or Gold.
〈富,および諸物の価値について〉というこの論究で私が証明しようとしたことは,以下の五つの若干の格率であるが,これらは今後使用する機会があるため,ここにまとめておくことにした.すなわち,
- どんな物もそれ自体に価格や価値を有するのではないこと.
- あらゆる物の価格や価値は,それを使用する機会や用途から生じること.
- 豊富さと希少性は,その機会に関して,物の価値を大きくしたり小さくしたりすること.
- ある商品の豊富さや希少性が,同じ用途ではない他の商品の価格を変えることはないこと.
- 貿易や商売においては,諸々の商品価値が同等ならば,それらの商品に差異はないということ,つまり,ある商人にとって鉛や鉄の20シリング分の価値は,銀や金の20シリング分と同じだけの価値があるということ.
(Barbon1696: 10-11)
ここでバーボンは本章で議論されてきたことを五つの格率にまとめている.すでに見てきた箇所であるが,それぞれの格率の内容がどこで取り扱われているのかを以下に示しておく.
第一の格率の内容は次の箇所に示されている.
どんな物も内在的価値を持ち得ない.
(Barbon1696: 6)
第二・第三の格率の内容は次の箇所に示されている.
諸物の価値を創出するのは,諸物の機会と有用性である.そして諸物の機会や使用の観点では,諸物をより大きな価値やより小さな価値のものにするのは,諸物の豊富さや希少性である.豊富さは諸物を安価にし,希少性は諸物を高価にする.
(Barbon1696: 5)
第四の格率の内容は,次の箇所に示されている.
同一の用途でもない限り,ある商品の豊富さが別の商品の価値を変えることはない.
(Barbon1696: 7)
第五の格率の内容は,次の箇所に示されている.
同等の価値の属する諸物のうちには差異や格差はない.すなわち,ある商品は,同一の価値を有している別の商品と同等の財である.
(Barbon1696: 7)