まだ先行研究で消耗してるの?

真面目に読むな。論理的に読むな。現実的なものは理性的であるだけでなく、実践的でもある。

〔翻訳〕ニコラス・バーボン『より軽い新貨幣の鋳造に関する論究』(6)

目次

sakiya1989.hatenablog.com

ニコラス・バーボン『より軽い新貨幣の鋳造に関する論究』(承前)

富、および諸事物の価値について(承前)

価値は何によって変化するか
f:id:sakiya1989:20200926213421j:plainf:id:sakiya1989:20200926213431j:plain

 精神の諸欲求を満たす諸事物は、ただ評判オピニオンだけを頼りにしている想像上のあるいは人為的な価値しか持っておらず、そしてそれらの諸事物の諸価値は、それらの諸事物を使用する人たちの気分ユーモア気まぐれファンシーにつれて変化する。そしてそれらは、流行遅れであるがゆえにその価値を失う高級なリッチ衣服のようである。

(Barbon1696: 4-5)

すでに以前のパラグラフで見たように、「精神の諸欲求を満たす諸事物」はアクセサリーのような奢侈品であり、そうしたものを身に着ける富豪は他人の「評判 opinion 」に価値の軸を置いているといえる。だから金持ちの「気分や気まぐれ」によってコロコロと価値が変動してしまう。流行が廃れればその物にもはや用はなくなり、価値もなくなる。

f:id:sakiya1989:20200926214213j:plain

 諸事物の価値を創出するのは、諸事物の機会と有用性である。そして諸事物の機会または使用の観点では、諸事物をより大きな価値またはより小さな価値のものにするのは、諸事物の豊富さまたは希少性である。豊富さは諸事物を安価にし、希少性は諸事物を高価にする。

(Barbon1696: 5)

古典派経済学において〈需要と供給〉という言葉で定式化されているように、諸事物は多ければ多いほど価格が下がり、安価となる。これに対して、希少なものの価値は高くなる。

 注意しなければならないのは、諸事物の〈豊富さ〉とその諸事物を用いる〈機会〉とをバーボンが区別している点である。例えば、ビットコインのマイニング工場では、演算能力を高めるために大量のGPU仕入れられた。しかし、GPUの演算能力は年々増大するので、過去に大量に仕入れられたGPUは後に新たな高性能GPUが発売されるやいなや、絶対的な性能としてではなく相対的な性能が低下してしまう。その結果として、過去のGPUはわずかな期間で役に立たなくなりその〈有用性〉を失ってしまう。これによって同時に過去のGPUはそれを用いる〈機会〉をも失ってしまう。過去のGPUは、いまではそれが豊富にあるとしても、それを用いる〈機会〉がなくなればその価値もまた消失してしまうのである。こうした点を考慮するならば、諸事物の〈有用性〉が変動することによってその〈機会〉にも影響を及ぼすといえるだろう。

sakiya1989.hatenablog.com

文献