目次
ニコラス・バーボン『より軽い新貨幣の鋳造に関する論究』(承前)
富、および諸事物の価値について(承前)
商品の価値と用途
同一の用途でもない限り、ある商品の豊富さが別の商品の価値を変えることはない。鉄や鉛の豊富さがトウモロコシや布のいずれかをより安価にまたはより高価にすることはないであろう。なぜなら、鉄や鉛はどちらも食料品や衣料品の欲求を満たすことはできないからである。
(Barbon1696: 7)
すでに見たように、バーボンは「豊富さは諸事物を安価にし、希少性は諸物を高価にする」(Barbon1696: 5)と述べ、その物の供給量に応じて価値が変化することを指摘していた。その上で、このパラグラフでは、豊富さや希少性が価値に影響を与えるのは、「同一の用途 same use 」を持つ商品(ただし同一の材質からなる商品ではない点に注意が必要である)の間に限定されることを述べているのである。
金・銀は鉛や鉄と同様に諸商品である。その豊富さや希少性に応じて、それで作られた諸物がより高価になったり、より安価になったりする。すなわち、金・銀の食器、刺繍などであっても、それらがトウモロコシ、布、鉛、鉄などをより高価にしたり、より安価にすることはできない。なぜなら、それらはこうした諸商品の諸用途を供給することはできないからである。
(Barbon1696: 7)
金や銀がトウモロコシや布の価格に影響を与えないのは、金や銀が金属でトウモロコシが食料品で布が衣料品だからではない。金や銀はその「用途」からして、トウモロコシや布、鉛、鉄の代替品にはなり得ないからである。