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スピノザ『エチカ』覚書(13)

目次

sakiya1989.hatenablog.com

スピノザ『エチカ』(承前)

第一部 神について(承前)

実体の無限性

定理八

 すべての実体は必然的に無限である.

証明

 同一の属性を有する実体は一つしか存在せず(定理五により), そしてその実体の本性には存在することが属する(定理七により). ゆえに実体は本性上有限なものとして存在するか無限なものとして存在するかである. しかし有限なものとして存在することはできない. なぜなら, 有限なものとして存在すればそれは同じ本性を有する他の実体によって限定されなければならず(定義二により), そしてこの実体もまた必然的に存在しなければならぬのであり(定理七により), したがって同一の属性を有する二つの実体が存在することになるが, これは不条理だからである(定理五により). ゆえに実体は無限なものとして存在する. Q.E.D.

(Spinoza1677: 5, 訳42頁)

【定理八】では「すべての実体は必然的に無限である」と述べられているが, これまでは「本性上」などと述べられてきたのに, ここで「必然的に」とは一体どういう違いがあるのだろうか.

 結論から言えば, この「必然的に」とは, 前の定理から論理必然的に帰結することを意味していると考えられる. 

 スピノザは【定理八の証明】で最初に【定理五】と【定理七】を引いている. これによって議論の後半で【定理五】の拘束力が強くなっている. スピノザによれば, 実体の在り方には「有限」と「無限」の二つの在り方がある. スピノザによる定義では, 「有限」とは他者による規定を受けている在り方を指す. 証明の方法としては, 実体の在り方が有限であるとは考えられないので, 逆に実体は無限だという命題を引き出している. 実体の「無限性」が「有限性」の否定を通じて示されている.

 ここで一度スピノザによる「有限性」と「無限性」の定義を確認しておこう. まず「有限性」については【定義二】で次のように述べられている。

【定義二】

 同じ本性の他のものによって限定されうるものは, 自己の類において有限であると言われる. 例えばある物体は, 我々が常により大なる他の物体を考えるがゆえに, 有限であると言われる. 同様にある思想は他の思想によって限定される. これに対して, 物体が思想によって限定されたり, 思想が物体によって限定されたりすることはない.

(Spinoza1677: 1, 訳37頁)

より大きなものを想像できる場合に, その在り方は「有限」であるといえる.

これに対してスピノザは「無限性」の在り方を〈絶対的に無限なもの〉と〈自己の類においてのみ無限なもの〉とに区別していた.

【定義六】

 〈神〉とは, 絶対に無限なる実有, 言いかえればおのおのが永遠・無限の本質を表現する無限に多くの属性から成っている実体, と私は解する. 説明 私は「自己の類において無限な」とは言わないで, 「絶対に無限な」と言う. なぜなら, 単に自己の類においてのみ無限なものについては, 我々は無限に多くの属性を否定することができる(言いかえれば我々はそのものの本性に属さない無限に多くの属性を考えることができる)が, これに反して, 絶対に無限なものの本質には, 本質を表現し・なんの否定も含まないあらゆるものが属するからである.

(Spinoza1677: 1-2, 訳38頁)

【定理八】に関して言えば, 「同一の属性を有する実体」が問題となる限りでは, そこでは〈自己の類においてのみ無限なもの〉だけが取り上げられているように思われる.

部分的否定と絶対的肯定

スピノザはここで次のような「備考」を加えている.

備考一

 有限であるということは実はある本性の存在の部分的否定であり, 無限であるということはその絶対的肯定であるから, この点から見れば, 単に定理七だけからして, すべての実体は無限でなければならないことが出てくる.

(Spinoza1677: 5, 訳42〜43頁)

「有限であるということは実はある本性の存在の部分的否定であり, 無限であるということはその絶対的肯定である」とは一体どういうことであろうか.

 【定義二】によれば「同じ本性の他のものによって限定されうるものは, 自己の類において有限であると言われる」のであって, 同一本性の他者によるこの限定作用こそ「部分的否定」に他ならない.

 これに対して【定義六】によれば「絶対に無限なものの本質には, 本質を表現し・なんの否定も含まないあらゆるものが属する」のであり, これこそは「絶対的肯定」である.

 【備考二】は長いので次回以降見ていくことにする.

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