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ヴィーコ『新しい学』覚書(9)

目次

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(承前)著作の観念

 祭壇と天

続けてヴィーコは、どうして祭壇が地球儀の下にあるのかの理由を説明しています。

祭壇が地球儀の下にあってこれを支えていることについても、これを不適切であるとおもってはならない。なぜなら、世界の最初の祭壇は異教徒たちによっていずれも詩人たちのいわゆる第一に建立されていたことが見いだされるからである。

(Vico 1744:4、訳22頁、強調引用者)

祭壇とは神聖なものなので、祭壇の上に余計なものを乗せることは不適切だと思われる可能性があります。だからヴィーコは、なぜ祭壇の上に地球儀が乗っかっているのかを説明しなければならなかったのかもしれません。

 ここで「第一天」という表現はよくわかりませんでしたが、おそらく地上と非常に近い天界をそのように呼んでいるのではないでしょうか。 その内容が以下の続きです。

詩人たちは、かれらの物語〔神話伝説〕のなかで、生育期にあった人類の幼児とでも言うべき最初の人間たちが——今日でも、幼児たちは、天は家の屋根とほとんど同じ高さのところにあると思いこんでいるように——山々の台地よりも高くはないと思いこんでいた時代に、天神は地上にあって人間たちに君臨し人類にいくつかの大いなる恩恵を残したと、これまた忠実にわたしたちに伝えているのである。それがその後、ギリシアの人々の知性がしだいに展開していくにつれて、ホメロスがかれの時代に神々がそこに住んでいたと語っているオリュンポス山のように、高山の頂上にまで高めあげられていった。そして最後には、今日天文学がわたしたちに論証してみせているように、天界にまで高めあげられ、オリュンポス山恒星天にまで高めあげられるにいたったのであった。これと同時に、祭壇も天に運ばれていって、ひとつの天宮を形成する。

(Vico 1744:4、訳22頁、強調引用者)

星座のモチーフはギリシア神話からきていて、僕は七月生まれのしし座に当たるのですが、これは12の星座に分けられています。西洋占星術はおそらく天文学と近いものがあり、12のサイン(宮)を合わせて黄道十二宮などと呼びます。

 古代の人々はオリュンポス山のような地上に神々が住んでいたと考えており、これは「人類の幼児」の持つ「想像力」によるものです。ヴィーコは歴史の初期の段階を「幼児」になぞらえて表現しており、「幼児」の特徴について本書第二部で次のように述べています。

幼児にあっては記憶力がきわめて旺盛である。ひいては想像力が過度なまでに活発である。想像力というのは拡大または合成された記憶力にほかならないのである。/この公理は、最初の幼児期の世界が形成していたにちがいないもろもろの詩的形象がいずれもじつに明白であることの原理である。

ヴィーコ 2018:訳197頁)

「幼児」の特徴は凄まじい「記憶力」と「想像力」にあり、だからこそ古代人は神話を持ち得たのだと言えるかもしれません。

ヘラクレスの「火」

また、それの上に置かれている火は、ご覧のように、獅子隣の宮座に移される(獅子は、いましがたも注意しておいたように、ヘラクレスがそこにを発生させて耕地に変えたネメアの森であったのである)。そして、その獅子の皮も、ヘラクレスの勝利を記念して、星辰にまで高めあげられたのだった。

(Vico 1744:4、訳22〜23頁、強調引用者)

祭壇の上に置かれている「火」は、ヘラクレスを表象しており、地球儀の中に描かれている獅子と隣り合わせになっています。ヘラクレスの十二の功業により、獅子は獅子座という星座になり、ヘラクレスヘルクレス座という星座とされるようになったわけです。ここで言及されているヘラクレスネメアの森については「ヴィーコ『新しい学』覚書(6)」ですでに述べた通りです。ヘラクレスとネメアの獅子については『新しい学』第4部「詩的家政学」でも次のように触れられています。

最後に、大地は凶暴で平定には多大の努力を要するという面をとらえたところから、最強の動物がつくりあげられた。ネメアの獅子である(そのためにそれ以来、動物たちのうちで最強のものには〈獅子〉という名があたえられるようになったのである)。この獅子を文献学者たちは途方もなく大きな蛇ではなかったかとも考えようとしている。また、これらはすべて口から火を吐き出すが、これはヘラクレスが森に放った火であったのだ。

ヴィーコ 2018:475)

しかし気になるのは「火」です。ヘラクレスの神話には、どうやら「火」は出てこないようなのです。この点、何か手がかりはないものでしょうか。

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