林要『温かいテクノロジー AIの見え方が変わる 人類のこれからが知れる 22世紀への知的冒険』(ライツ社、2023年)
ロボットとメンタルケア
著者は、かつてPepperの開発主任で知られる林要(1973-)氏である。林氏はPepper開発後に起業し、本書の表紙のイラストにもなっている「LOVOT」というロボットを作った。
筆者もたまたま休日に立ち寄ったヨドバシカメラ マルチメディアさいたま新都心駅前店内に置かれていたLOVOTを手に取ったことがある。LOVOTは画面越しの映像で見るのとは異なり、実際に手に抱えてみると非常に愛くるしい存在であることがすぐにわかる。
本書は単にロボットを語るにあらず、ロボットを作る過程で林氏が「人間」について考えたことが詳細に描かれている。ロボットは人間の作業を代替するロボットとしてこれまでに存在してきたが、人間の作業には役に立たないロボットというものを林氏は創発した。人間の作業を代替しないということは、存在意義の無さを意味するものではない。林氏が注目するのが、メンタルケアに役立つロボットである。「LOVOT」は倒れたりするため、むしろ人間の助けを必要とする。だが、人間が何かを助けることがかえってメンタルをケアすることができるのだ。こうした働きは、同じく人間の作業を代替しない犬や猫といったいわゆる「ペット」を通じて我々も経験したことがあるだろう。
そういえばLOVOTはどこかドラえもんに似ていなくもない。丸みがあって、手足が短くて、愛着を持たれやすいフォルムをしている。愛着を持たれやすいロボットをデザインする際には、マンガで描かれたキャラクターをモチーフにするのは悪くないのかもしれない。