まだ先行研究で消耗してるの?

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TVアニメ『呪術廻戦』第2期「懐玉・玉折」所感

 TVアニメ『呪術廻戦』(原作: 芥見下々)第2期「懐玉・玉折」を見た。五条悟はいかにして「最強の呪術師」五条悟になっていくのか、そして敵キャラとして登場する夏油傑はいかにして「最悪の呪詛師」夏油傑になっていくのか、というエピソードを描き出したのが過去編「懐玉・玉折」である。

 『呪術廻戦』第一期を見た時は筆者はこの作品にそれほど面白みを感じなかった(一応、映画もIMAXで観に行った)。しかし、今シーズン他に観たいと思わせるコンテンツが無い中では、第二期は最も面白く素晴らしい作品であった。導入となる#25「懐玉」はまるでホラー映画を模したかのようなカメラワークで、シークエンスのひとつひとつに製作者の「気合い」が感じられて良かった。

 五条悟と夏油傑は、“星漿体”・天内理子を狙う呪詛師集団『Q』と宗教団体『盤星教』から彼女を「護衛」し「抹消」する任務を与えられる。理子には3,000万円の懸賞金が掛けられ、懸賞金狙いの呪詛師たちが彼女を狙う。夏油傑は敵の行動を先読みして敢えて見かけ上の隙を作り、敵を近くにおびき寄せて倒すのだが、後になってわかるのは、実は同じ構図で伏黒甚爾が五条悟の行動を先読みして倒す伏線になっていた——つまり甚爾は理子の懸賞金に三日間という期限を設けることで、そのあいだ術式を解かない五条悟の体力をジリジリと消耗させ、最後に悟が術式を解く隙をつくることで絶好の機会を作り出していた——ということである。

 過去編というだけあって、リアリティを感じさせる設定が随所に散りばめられている。作中で五条悟は1989年12月生まれという設定であり、1989年7月生まれである筆者もまた五条悟と同じ人生を歩んできたはずである。五条悟と夏油傑らは「懐玉・玉折」では当時高専2年ということで、作中は2006年の設定である。五条悟と夏油傑は携帯電話で連絡を頻繁に取り合っているが、彼らが持っている機種も2006年という時代に即したものであり、ここにも作者のこだわりが感じられる。五条悟は折りたたみ式のケータイで、夏油傑はスライド式のちょっとオシャレな機種を使っている。五条悟は話すときにケータイのマイクを外側に向けているので、持ち方が少しおかしいのだが、視聴者にとっては悟の持っているケータイがガラケーであることがより鮮明に伝わる構図になっている。五条悟がケータイの壁紙を井上和香にしたシーンもまた、当時グラビアアイドルで有名でTVにも出ていた代表的なタレント名に言及することで、2006年の時代感を敢えて演出している(#26「懐玉-弐-」)。

 何より夏のこの暑い時期に合わせて爽やかな「青」で統一されたテーマがピッタリ合っている。「青」のイメージは、OPで描かれるような青春真っ只中の「青」であり、あるいは五条悟の瞳の色でもあり、天内理子が見た水中のイメージかもしれない(#27「懐玉-参-」)。EDで描かれる登下校の雨のシーンも梅雨を想起させるようでなんだか瑞々しい。同じ作品とは思えないほど『呪術廻戦』のこれまでのドロドロとした暗い演出とは異なっている。それが何を意味するのかはわからないけれども。

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