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自民党「日本国憲法改正草案」(承前)
前文(承前)
次の第二段落に示されているのは,国際社会において果たすべき「日本国」の役割——自民党がそのように考える限りでの——である.
我が国は,先の大戦による荒廃や幾多の大災害を乗り越えて発展し,今や国際社会において重要な地位を占めており,平和主義の下,諸外国との友好関係を増進し,世界の平和と繁栄に貢献する.
(自民党2012: 1)
「先の対戦による荒廃や幾多の大災害を乗り越えて発展し,今や国際社会において重要な地位を占めており」という箇所は,自民党による「日本国」の歴史認識に他ならない.憲法の条文はその制定後には固定化されるが,歴史認識は時代と共に変化するので,憲法と歴史認識との間の軋轢は時代と共にますます大きくなる.よって,憲法の耐用年数を長くする為には,憲法の中に歴史認識を組み込まない方が望ましい.
この第二段落は,改憲草案「第二章 安全保障」と関係がある.「平和主義の下,諸外国との友好関係を増進し,世界の平和と繁栄に貢献する」という箇所からは,集団的自衛権の行使により,国防軍の海外派遣を行えるようにしようとする自民党の思惑が垣間見える.