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アダム・スミス『国富論』覚書(3)

目次

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アダム・スミス国富論』(承前)

序論および本書の構想(承前)

一国の経済を左右する二つの事情

 だが,この割合は,どの国民の場合も,次の二つの〔異なった〕事情によって左右されるにちがいない.すなわち第一は,国民の労働がふつう行なわれるさいの熟練,技能,判断力の程度如何いかんであり,また第二は,有用な労働に従事する人々の数と,そのような労働に従事しない人々の数との割合である.どの国でも,地味,気候,国土の大きさがどうであれ,国民にたいする年々の供給が豊かであるか乏しいかは,その特定の状況のもとで,右の二つの事情に依存するにちがいない.

(Smith1789: 1-2,大河内ほか訳およびガルヴェ訳,〔〕は引用者による補足)

前パラグラフに出てきた「割合」は,生産物量(自国の生産物と他国から購入した生産物の総計)と消費者数(≠国民の数)との比率のことであるが,この割合を決めるのは「二つの異なった事情」,すなわち(1)労働者の技術力(技量や手先の器用さや,経験に基づく判断力など),そして(2)一国民に占める「有用労働」への従事者数の割合である.

 「地味,気候,国土の広さ」はそれぞれの地域ごとに異なっており——その違いをモンテスキューは『法の精神』で考察した——,地球上に同じ環境の場所は一つとして存在しない.だからこそ,各地を比較対照し分析するための共通の指標が必要となる.その指標となるのが,上の「二つの事情」である.

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