はじめに
今回は「6G」について書きたいと思う。(仕事に関わるとはいえ、以下の内容はほとんど独学でにわかの知識で書いているので、間違ったことを書いてしまっている場合もあることをあらかじめ断っておく。)
『ようやくこれから「5G」を導入しようとしている段階なのに、もう「6G」の話するの?』と思われるかもしれない。
結論から言えば、「6G」の世界ではIoTが本格的に活躍する時代になる。「5G」では不完全であった要因が解消され、インターネットに接続されたモノが自律的に動作できるようになる世界であると考えられる。
とはいえ、「6G」は「5G」に続く次世代移動通信システムとして観念することは可能であっても、今のところ3GPPやITUによって何ら規定されていないため、現時点では『「6G」は存在しない』と言っても過言ではない状況にある。だから「6G」ではなく「Beyond 5G」(総務省)と呼ばれる場合もある。
しかしながら、すでに各企業は来るべき「6G」の世界に向けて日々研究に取り組んでいる。そして「6G」は2030年代には実用化が見込まれている。
今後の「5G」の世界を理解するには、その先の「6G」の世界をみておいたほうがかえってわかりやすいと思う。
「6G」とは何か
まず大前提として、「5G」は「4G」よりも高速な移動通信システムだということである。「6G」は「5G」の延長線上に構想されており、「6G」は「5G」よりももっと高速で高次な移動通信システムであると考えられる。
5Gの特徴
そこで今一度「5G」の特徴について確認しておこう。「5G」の主な特徴は次の三つである。
1、高速大容量(eMBB: enhanced Mobile Broadband)
2、高信頼低遅延通信(URLLC: Ultra-Reliable and Low Latency)
3、多数同時接続(mMTC: massive Machine Type Communication)
これらの特徴を実現するために「Massive MIMO」や「モバイルエッジコンピューティング」などの様々な技術が複合的に導入されている。
「6G」の特徴
「はじめに」でも述べた通り、「6G」はいまだに規格化されていない概念である。
とはいえ、NTTドコモはすでに「5Gの高度化と6G」(ホワイトペーパー、2020年)において「6G」の特徴を次のように挙げている。
- 超高速・大容量通信
- 超カバレッジ拡張
- 超低消費電力・低コスト化
- 超低遅延
- 超高信頼通信
- 超多接続&センシング
また総務省が「Beyond 5G」と呼んでいるものも「6G」の特徴である。
- あらゆる場所からの膨大なデータを瞬時に正確に処理できるようにする5Gの特徴的な機能の更なる高度化(超高速・大容量、超低遅延、超多数同時接続)
- 基地局等の設備やデータ処理量の激増に対応できるようにする超低消費電力
- 利用者が意識しなくてもセキュリティ・プライバシーが常に確保され、災害や障害の発生時でもサービスが途絶えず、瞬時に復旧する超安全・信頼性
- AI技術により人手を介さず(ゼロタッチ)あらゆる機器が自律的に連携し、有線・無線を意識せず即座に利用者のニーズに合わせて最適なネットワークを構築する自律性
- 衛星やHAPS等の異なる通信システムとシームレスに繋がり、端末や窓など様々なものも基地局とすること(ユビキタス基地局)で、至るところにある機器が相互に連動しつつ、海、空、宇宙を含むあらゆる場所で通信を利用可能とする拡張性
(『令和2年版 情報通信白書』295〜296頁)
先に見た「5G」の特徴と見比べていただければわかる通り、「6G」の構想は「5G」の規格を超える「超高速・大容量、超低遅延、超多数同時接続、超高信頼通信」という特徴のみならず、「超低消費電力」や通信範囲の拡張性にまで及んでいる。
これらの特徴を実現すべく、現在、成層圏を利用した通信システム(HAPS)や、「OAM-MIMO多重伝送」などの技術開発が進んでいる。
(つづく)