全然ロジカルじゃない(!)書きたいことをひたすら書くブログ

全然ロジカルじゃない(!)書きたいことをひたすら書くブログです。ノンロジカルエッセイ。

プルーフ・オブ・ワーク(その4)補足とトラストレス

ーまずは前回までの記事の簡単な補足から始めますー

 

前々回の記事「プルーフ・オブ・ワーク(その2)レイバーとワーク 」で、ハンナ・アレントによるレイバー・ワーク(・アクション)という3つの活動を紹介しました。

しかし現代の我々がワークという時に、アレントの活動区分がそのまま当てはまるかというと、やはり疑問に思わざるを得ません。

特に現実世界での「ワーク」(Work)の用法が、僕にとっては謎です。実際には「ワークでないようなワーク」もあれば「レイバーのようなワーク」もありますし、「ワークのようなレイバー」というのもあり得るのではないかと。人間の活動は、多数の人々の手作業、頭脳労働、コミュニケーションの複合体で成立していますから、これらを明確に切り分けられない場合の方が多いかもしれません。なので、切り分けるのではなく、むしろそれぞれの側面のミックスとして捉えざるを得ないのではないかと思います。

 

また前回の記事「プルーフ・オブ・ワーク(その3)金とビットコイン」に書いておくべき内容の補足ですが、金には分割できる性質があり、この点はビットコインも同様で、ビットコインは1BTCずつ買うわけではなく、分割して0.00001BTCのような保有の仕方もできます(分割可能性)。あとは説明するまでもなく価値保存機能も同様です。金もビットコインも腐らないので、交換価値として保存しておくことができます(世の中には商品としてのナマモノのように劣化して、価値が時間とともに低減していくものもある)。

ー以上、簡単な補足終わりです。ー

 

さて、ビットコインプルーフ・オブ・ワークを採用していますが、そもそも全ての暗号通貨(cryptocurrency)がプルーフ・オブ・ワークというシステムを採用しているわけではなく(プルーフ・オブ・ステークとか)別のシステムに依っている場合もあるようなぁということを思い出しました。なので、この記事ではとりあえず、プルーフ・オブ・ワークを採用しているビットコインだけを想定して考えてみます。

プルーフ・オブ・ワークの凄いところは、このようにマイナー(採掘者)が報酬を得るというインセンティブを導入することによって、人間の利己心を暗号通貨のシステム維持のエネルギーに変えていることです。これは人間の仕組みをも利用したシステムだと言えます。

 サトシ・ナカモトの論文に従い、ビットコインP2Pブロックチェーンシステムにより「トラストレス」(trustless)な貨幣システムを実現した、と言われているわけですが、その場合の「トラストレス」というのは「暗号通貨ビットコインが政府発行のものではないがゆえに、中央集権機構の承認による政治的信頼が無い」という意味での「トラストレス」でしょう。もちろん「トラスト」にもいろんな用法があるはずで、「トラストバンカー」というときの「トラスト」は貨幣システムでの「トラスト」とは異なって、「資産について第三者に全幅の信頼を寄せて委託する」という意味になるでしょう*1

しかし、「トラストレス」と言っても、ある意味で「トラストレス」と言い切れない仕組みを実現しているのがプルーフ・オブ・ワークであり、第三者の計算による取引確認の仕事であります。

 

さらに、ここで社会経済学的な知見から考えると、仮想通貨にも一定の「労働」(一応、レイバーではなくワークとしておく)が投下されているという仮説が立てられます。

例えば、金は他の商品と交換できますが、その際の交換価値には社会的平均労働が反映されていると考えられます(1エレのリネン云々の話はしないw)。

そして金と同様に、ビットコインプルーフ・オブ・ワーク抜きには成立し得ないとすれば、プルーフ・オブ・ワークはビットコインの本質、根幹であり、ビットコインという商品には、プルーフ・オブ・ワークと呼ばれる労働が体化(embody)されていると考えられるでしょう。

もちろん現在の仮想通貨の価格がバブルと呼ばれている以上は、現段階では需要と供給の面から価格を論じるのがベターかもしれません。なので実際の取引価格については需給という側面も絡めたミックスで考えましょう。

 

sakiya1989.hatenablog.com

sakiya1989.hatenablog.com

sakiya1989.hatenablog.com

*1:最近、大石さんと広瀬さんが「トラストレス」の見解をめぐってバトっているのを読んだけれども、ここではスルー。

プルーフ・オブ・ワーク(その3)金とビットコイン

プルーフ・オブ・ワークの記事の続きです。

今回は、金とビットコインの比較について書きます。

sakiya1989.hatenablog.com

sakiya1989.hatenablog.com

ビットコインは「流通量(発行量あるいは埋蔵量)に限度がある」という点で金とよく似ています。金が地球上の埋蔵量に限度があるのと同様に、ビットコインにも流通量に限度があります。

具体的な数字を挙げると、金の総量は23万トンと見積もられており、これまで人間が発掘した金の総量はおよそ17万トン、残り発掘されうる埋蔵量は6万トンと予測されているそうです*1

これに対してビットコインの発行上限は約2,100万BTC*2と言われています。

matome.naver.jp

ただし、ビットコインが金と似ているのは、「その埋蔵量、流通量に限度がある」という点であって、「ボラティリティ」(volatility)ではないことには注意が必要です。価格変動のしやすさのことを「ボラティリティ」と言います。「ボラティリティが大きい」という場合には、価格変動が大きいことを意味します。「ボラティリティが小さい」という場合には、価格変動が小さいことを意味します。仮想通貨はマクロ的には上昇トレンドですが、ミクロ的には明らかに乱高下が激しいので「ボラティリティが大きい」と言えます。

またビットコイン同様、金価格も変動しますが、金という実物資産の価値(交換価値)が概ねゼロにならない(紙幣が紙切れになっても)と言われているのに対して、現在のところビットコインの価格変動は激しく、突然の規制なり全ての電力・PCの崩壊によってビットコインの仕組みや交換価値が(電子上)ゼロにならないとは全く言い切れないと思います。まあそこまでの非常事態になったらお金云々の話どころじゃないかもしれませんが…(いや、非常事態にこそ、お金が問題になるのか?)。

(続く)

*1:こういう埋蔵量の話はプラチナや石油についても語られますが、ここではスルー。

*2:正確には20,999,999,9769BTC。

プルーフ・オブ・ワーク(その2)レイバーとワーク

昨日、プルーフ・オブ・ワークについての記事を書きました。

sakiya1989.hatenablog.com

 で、一晩寝て起きたら、「レイバー」(labour、労働)と「ワーク」(work、仕事)ってそもそも違う意味だし由来も違うよね、ってことを思い出しました。「レイバー」は苦しい骨折り労働(労苦)のことで、「ワーク」はもっとモノづくりに近いイメージの活動です。

二十世紀の思想家ハンナ・アレントは、人間の活動を「レイバー」(labour)と「ワーク」(work)と「アクション」(action)の3つに区別しました。

「アクション」はどちらかというと、公共空間で自分の意見を表明する言論活動を指します。スピーチだけでなく、私がここでブログに書きたいことを書いて公に表明することも、広義の意味では「アクション」に当たるかもしれません。

これら3つの区別については、ハンナ・アレント『人間の条件』(英題:The Human Condition)=『活動的生活』(独題:Vita activa oder vom tätigen Leben)で論じられているので、詳しくはそちらをご覧ください。 

 

で、「プルーフ・オブ・ワーク」ではナンスを求める膨大な計算のことを「ワーク」と呼んでいます。「ワーク」というからには、「レイバー」ではないわけですから、「プルーフ・オブ・ワーク」に労働価値説と似ているとか昨日書いたわけですが、むしろ先に両者の相違点を発見してしまった感じです。続きは明日にします。 

プルーフ・オブ・ワーク(その1)労働価値説

自分はしばらくビットコインについて書く気が起きなかったのですが、最近ビットコインの記事が一般雑誌でも目立つようになって来たので、自分のビットコイン理解を整理するために、ビットコインを思想的な側面から書きたいと思います。

 

その前に、一年ぐらい前にビットコインについて勉強した時に、ビットコインの仕組みがすんなり腑に落ちたんですよ。なんで腑に落ちたかというと、おそらく自分が経済学部で貨幣について勉強したことが背景知識としてあったからですね。

経済学と一口に言いましても色々あって、最近では行動経済学が個人的には面白いのですが、一般教養的ないわゆるミクロ経済学マクロ経済学、さらに厚生経済学労働経済学、国際経済学など大学でも多くの科目が設置されております。

またこういった経済学とは少し違う思想系の経済学となると、アダム・スミスやセー、リカードらの古典派経済学とか、マルクス資本論をベースとした社会経済学、ハイエクフリードマン新自由主義の経済学があったりします。

で、古典派経済学には「労働価値説(Labour Theory of Work, LTV*1)」という考え方があります。労働価値説では、価値の源泉は労働に由来すると考えます。

ここでビットコインに話を戻すと、ビットコインではマイニング(採掘)するために「プルーフ・オブ・ワーク」(Proof of Work=PoW)すなわち「仕事の証明」が必要となります。コンピュータにブロックごとに膨大な計算をさせること(これが「労働」に該当する)によって、採掘者はコインを獲得できます。この時、一番早く計算が終わった者がコインを手にします。要するに、計算という「仕事(work)」がビットコインを得るための「証明(proof)」となっているわけです。

そして面白いことに、このプルーフ・オブ・ワークという仕組みは労働価値説と非常に似ているのですが、この似ている点を説明するためには、労働価値説と金について書かないといけないのです。一旦、今日はここまでにしておきます。

 

↓去年の記事

sakiya1989.hatenablog.com

*1:「顧客生涯価値」(Life Time Value, LTV)のことではない。

ビットコインチャートを眺める

ビットコインチャートが閲覧できるサイトを見つけました。

blockchain.info

 

前から常々思っているのですが、ビットコインのチャートって数式に表せそうな気がするんですよね。

まずは下の図1「ビットコイン時価総額(2年間)」をご覧ください。

f:id:sakiya1989:20171129133141j:plain図1 ビットコイン時価総額(2年間)

もちろん細かい変動はあるんですけども、ざっくりと曲線を描いてるのがお分かりかと思います。データがCSVJSONファイルでDLできるので、読み込んだら関数が出てくるようにできるかもしれません。(やり方はこれから調べます。)

 

次の図2「トランザクションの合計数(2年間)」はほぼ直線的に増加しているグラフであることがわかります。

f:id:sakiya1989:20171129133641j:plain図2 トランザクションの合計数(2年間)

 しかし、期間を伸ばして見ると、なんとこれは直線ではなく、綺麗な曲線になっていることが判明します。それが下の図3「トランザクションの合計数(全期間)」です。

f:id:sakiya1989:20171129134412j:plain図3 トランザクションの合計数(全期間)

ここまで綺麗だと、何かの関数で表現できる気がしてなりません。

 

最後にビットコインの総流通量を見てみましょう。

f:id:sakiya1989:20171129135533j:plain図4 ビットコインの総流通量(1年間)

このグラフだけ見ると、ビットコインの総流通量はほぼ直線的に増えていくように見えます。

しかし、です。もっと期間を延ばして、次の図5「ビットコインの総流通量(全期間)」を見てください。

f:id:sakiya1989:20171129134835j:plain図5 ビットコインの総流通量(全期間)

ビットコインの総流通量を短期的にミクロに眺めると、ほとんど直線的に増えているのですが、長期的にマクロに眺めると、ある時期を境に傾きが緩やかになっていることが見て取れます。なので、今後はもっと傾きが緩やかになっていくのかもしれません。

統計学(その4)ピアソンの積率相関係数

ここしばらく統計学とそれに応用できそうな分野をひたすらつまみ食いするスタイルが続いております。

大手企業ではRやSPSSによる統計解析・データマイニングはすでに行われていますので、私が今更統計学を勉強したところでスキルセットの差異化は望めないでしょう。

なので、自分は現場の数値分析に統計学を持ち込みつつ、さらに統計解析に応用できそうな分野を勉強しているのです。具体的には、マセマの『解析力学』や『熱力学』の本で物理・化学を勉強しています。

冷静に考えると、ふつうは統計学解析力学や熱力学に応用されるものであって、解析力学や熱力学を統計解析に応用するというのは話が逆なように思われるかもしれません。僕がやろうとしているのは単に物理・化学の研究ではなくて、熱力学に出てくる分子の振る舞いを表現する数式や分析の仕方を学ぶことで、それをリアルな販売の現場で人々の購買行動や意思決定の分析に応用することです。上手くいくのにしばらく時間がかかるかもしれません。

あと最近は仕事で自分で数値を拾ってデータ分析をしています。特に誰に言われたわけでもなく、自主的にやっております。 

Googleスプレッドシートに数値を入力し、試しに「ピアソンの積率相関係数r」を出しています。コードは「=CORREL(A2 : A100, B2 : B100 )」です。「ピアソンの積率相関係数rの二乗」を算出する場合には「=RSQ(A2 : A100, B2 : B100)」を用います。

「ピアソンの積率相関係数r」とは、2つの要素間の相関関係の強さを示す数値(0〜1)のことです。2つの変数の相関が強ければ数値は1に近づき、両者の相関が弱ければ0に近づきます。

ただ相関係数を算出したはいいけれども、そのデータの活用法はまだ見いだせていません。

 

統計学(その3)フィッシャーの三原則

今回はフィッシャー(Sir Ronald Aylmer Fisher, 1890-1962)の三原則のメモです。

 

フィッシャーは著書『実験計画法』(The Design of Experiments, 1935)において、以下の三原則を提示しました。

反復(replication):誤差分散を評価するために、同じ条件下で測定を繰り返す.

無作為化(randomization):系統誤差(systematic error)を偶然誤差(random error)に転化するために, 処理(条件)の割り付けを無作為化する

局所管理(local control):系統誤差を除去するために, ブロックを構成して, 各ブロック内では条件が均一になるよう管理する.

寺尾 敦「社会統計 第9回:実験計画法」design.pptx, p3

bellcurve.jp

 フィッシャーの三原則を全て満たす実験を「乱塊法(randomized block design)」と呼びます。

 

ちなみに、日本語で読めるフィッシャーの著作としては以下のものがあります。

R. A. フィッシャー『統計的方法と科学的推論』(渋谷 政昭・竹内 啓 訳、岩波書店)。原著 "Statistical methods and statistical inference", 1956.

R. A. フィッシャー『実験計画法』(遠藤 健児・鍋谷 清治 訳、森北出版)。原著 "The Design of Experiments", 1935.

R. A. フィッシャー『研究者のための統計的方法』(遠藤 健児・鍋谷 清治 訳、森北出版)。原著 "Statistical Methods for Research Workers", 1925.

 

『統計的方法と科学的推論』の訳者解説は、林 岳彦さんのブログで読むことができます。

takehiko-i-hayashi.hatenablog.com

 

日本では、北川 敏男さんがフィッシャーについて記述しています。

北川 敏男『統計科学の30年 わが師わが友ー』(共立出版、1969年)。

 

フィッシャーの原著一覧についてはWikipediaRonald Fisher bibliographyが参考になります。