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ヴィーコ『新しい学』覚書(7)

目次

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(承前)著作の観念

オリンピアード」と「時間の起源」

 ヴィーコは続けて古代ギリシアにおける「時間の起源」について述べています。

また、それはさらには時間の起源を提示しようともしている。時間は、ギリシア——わたしたちは異教の古代についてわたしたちがもっている知識のすべてをギリシア人から得ているのである——のもとでは、オリュンピア競技にともなうオリュンピア紀から始まっているが、このオリュンピア競技の創始者ヘラクレスであったと言い伝えられている。だから、オリュンピア競技はネメアの人々によって始められたもので、殺した獅子を持ち帰ったヘラクレスの勝利を祝うために導入されたものであったにちがいないのである。こうして、ギリシア人の時間は、かれらのあいだで田野の耕作が始まった時点から始まったのであった。

(Vico 1744:3、訳20頁、強調引用者)

ここで語られている「時間の起源」とは一体どういう意味でしょうか。この「時間」を理解する鍵は「オリュンピア競技にともなうオリュンピア紀」という部分です。「オリュンピア紀(元)」あるいはオリンピアードとは、次のオリンピックが開催されるまでの4年周期の単位を意味します。オリュンピア競技のように、ある一定期間を経て繰り返されることによって時間という単位が生まれたので、ここにヴィーコは「時間の起源」を見出すわけです。なおこのパラグラフの内容は、第10部「詩的年代学」でも次のように触れられています。

こうしてまたヘラクレスは、ギリシア人(異教の古代にかんしてわたしたちがもっている知識のすべてをわたしたちはギリシア人から得ているのである)のもとにおける名高い時代区分の方法であったオリュンピア競技の創始者である、とわたしたちに語り伝えられてきたのだった。なぜなら、かれは森に火をあたえて、それを種播き用の土地に変えた。そして、この土地から得られる収穫の回数でもって、当初年数が数えられていたからである。またこの競技は、ヘラクレスが口から炎を吐き出すネメアの獅子に勝利したことを祝うために、ネメア人によって開始されたのにちがいない。

ヴィーコ 2018b:181〜182)

 ところでヴィーコは「オリュンピア競技の創始者ヘラクレスであった」と述べていますが、これは果たして本当なのでしょうか。古代ギリシアにおいてオリュンピア競技というのは、ギリシアの四大競技大祭の一つであったと言われています。オリュンピアで4年に1度開催されたオリュンピア大祭の他にも、まさにネメアで2年に1度開催されたネメア大祭、そしてイストモスで2年に1度開催されたイストモス大祭デルポイで4年に1度開催されたピューティア大祭がありました。Wikipediaの"Nemean Games"(英語)の項目には"With the Isthmian Games, the Nemean Games were held both the year before and the year after the Ancient Olympic Games and the Pythian Games in the third year of the Olympiad cycle. Like the Olympic Games, they were held in honour of Zeus. They were said to have been founded by Heracles after he defeated the Nemean Lion"という記述があり、確かにヴィーコが述べているように「オリュンピア競技はネメアの人々によって始められたもので、殺した獅子を持ち帰ったヘラクレスの勝利を祝うために導入されたものであった」という伝説が残っているようです。

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文献