まだ先行研究で消耗してるの?

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【時事】『日本経済新聞』2025年(令和7年)9月5日(金曜日)

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日本経済新聞

2025年(令和7年)9月5日(金曜日)

日本経済新聞』2025年(令和7年)9月5日(金曜日)
1面記事「「マイiPS細胞」を安く 京大・伊藤忠 国内外で製造キット」

1面記事「「マイiPS細胞」を安く 京大・伊藤忠 国内外で製造キット」に関しては、臓器移植などの外科治療において大きなポテンシャルを持っていると思う。病気による死因の第一位は悪性新生物であるが、そうしたがんや肉腫を切除して、代わりに他人の組織や臓器を移植した際に生ずる懸念点としては免疫による拒絶反応がある。そのため、自己免疫疾患を起こさない限り、拒絶反応が起こる可能性が最も低いのがマイiPS細胞であることになる。これが安価になればより多くの人が治療に利用できるようになるので、この技術が提供されることは非常に望ましい。

2面記事「米ロ首脳「数日内に協議」 ウクライナ・欧州「安全の保証」議論」

2面記事「米ロ首脳「数日内に協議」 ウクライナ・欧州「安全の保証」議論」によると、「ウクライナのゼレンスキー大統領と欧州首脳は4日、ロシアとの停戦後の「安全の保証」について議論した」という。ここでいう「安全の保証」とは何を指すのであろうか。同記事によると、「安全の保証には、有志国連合が停戦監視にあたる平和維持部隊を前線に派遣する案などが取り沙汰されている」という。昨日このブログで取り上げた越智萌『誰が戦争の後片付けをするのか——戦争後の法と正義』(筑摩書房、2025年)では「ユス・ポスト・ベルム jus post bellum」すなわち「戦争後の法」という概念が言及されていた。その「ユス・ポスト・ベルム」の観点からすると、「安全の保証」は戦後への移行にあたって必要なプロセスではあるものの、その入り口に過ぎない。戦争の被害者への補償の議論はおそらくこれからであるので、その限りで今から「ユス・ポスト・ベルム」に向けて市民生活の恢復のために考えるべきことはまだまだ多くあることがわかる。

11面記事「韓国労組、新政権で強気 現代自、7年ぶりスト」

11面記事「韓国労組、新政権で強気 現代自、7年ぶりスト」によれば、「賃金や小用で労働者の不満が膨らむなか、労組を支持基盤の一つとする革新系政権が6月に発足したことが追い風」となり、現代自の時限ストにみられるように、「韓国の労働組合が強行姿勢を見せ始めた」という。労組に近い政権が実現されたことにより、労組の動きに変化が生じたというのは、興味深い現象である。同記事によると、民主労総と韓国労総の委員長二人を相手に2大労組のトップと会談した李大統領は「私が労災や賃金未払いの発言が多いので労働問題にこだわっている、と言われるがそうではない」と説明したらしいが、そういう発言が多いから大統領が労働問題に関心があると客観的には見えるのだろうし、そのことが労組の運動に積極的な影響を与えたことは間違いがない。少なくとも、大統領の興味関心が良くも悪くも国民の動きに影響を与えかねないということは、覚えておいて良いかもしれない。

12面記事「関税訴訟、米政権が上訴 「違憲」不服 最高裁に迅速審理要求」

12面記事「関税訴訟、米政権が上訴 「違憲」不服 最高裁に迅速審理要求」によると、「ワシントンの米連邦巡回区酵素裁判所は8月29日、トランプ大統領が法律を拡大解釈し、相互関税と中国・カナダ・メキシコに課すフェンタニル関税を発動させたと認定。大統領権限の逸脱で憲法違反だとした一審の判断を指示した」という。安倍政権から菅政権にかけての「閣議決定」などの使い方を見ていても思うのだが、法治国家という建前はあっても、最近の政権側の運用の面では結構ザルで、大統領や首相が法規定の範囲を逸脱していてそれが専門家に指摘されても、国民が法学に無知なためなのか、ある程度押し切って政策が実行されてしまっているように思われる。権力者が法を逸脱して運用すること自体は、私はこれは基本的に良くない兆候だとは考えているものの、トランプ関税がトランプ大統領の十八番である「取引(ディール)」の手法として、しかも相手を交渉のテーブルに着かせることができるという形で実際に有効活用されている状況であり、しかもそれが多くの国々の経済政策にも多大な影響を与えているというのは、非常に興味深い現象である。