まだ先行研究で消耗してるの?

真面目に読むな。論理的に読むな。現実的なものは理性的であるだけでなく、実践的でもある。

承認のリーダーシップと言葉の生命力

目次

はじめに

 最近YouTube鴨頭嘉人(1966-)さんの講演を聴いている.しかも繰り返し繰り返しである.鴨頭さんの講演が素晴らしく面白く仕事の為になり,他の動画を見てもつまらなく感じてしまうほどである.鴨頭さんは日本マクドナルドにアルバイトとして入社し,その後,店長やSV(スーパーバイザー),人事などの業務を経験されたという.

 鴨頭さんの講演は驚くほど実践的だ.講演そのものがすでに実践的なのだが,マクドナルドのを通じて培った「承認のリーダーシップ」が素晴らしく実践的なのである.

承認のリーダーシップ

 鴨頭さんの「承認のリーダーシップ」とは,ただ単に部下を褒める・叱るといった次元のコミュニケーションではなく,そのコミュニケーションの土台をつくるものだという.私たちがやりがちな褒め方は,部下が結果を出したときだけ褒めることである.しかし,結果を出したときだけ褒められた部下はどう思うか.その部下は『普段の仕事ぶりも見ていないのに,結果出したときにだけ褒めやがってこのヤロー!』と心の中では思っているかもしれない.叱るときも同様である.褒めることや叱ることそれ自体に問題があるのではない.褒めることや叱ることは,それが信頼によって成立するがゆえに,いきなりなしえるものではなく,そうした信頼を成立せしめる前提・土台が重要なのである.この土台を用意するものが,鴨頭さんによれば,日常的な承認である.部下が結果を出す前に,『ありがとう!』『いいね!』を送る.実績の結果を承認するのではなく,仕事のプロセスやそれ以前の意識を承認することで,承認の回数を増大させている.この承認の回数こそがコミュニケーションの土台であり,それによって信頼を形成する.逆にいきなり褒めることや叱ることは,上司に対する部下の信頼を失墜させかねない.むしろ褒めることや叱ることは,相互の信頼の上に成り立っているのである.

言葉の生命力を信じる

 鴨頭さんは『いいね!』一つで世界を変えようとしている.本人は本気でそう思っているし,『そう思ったら,そう』なのだという.鴨頭さんは言葉の力を信じている.酷い言葉を使ったら,その言葉は必ず相手の心に残るし,良い言葉を使えばその人に一生残る.『やりたかったら,やればいいんじゃ』という父親の言葉が,父親が死んでもいまだに心の中で生き続けていると鴨頭さんはいう.言葉には生命力があるのだ.

人々を笑顔にする仕事は直接目に見えない

 鴨頭さんは池袋が好きだという.私も池袋が好きだ.なんならこの原稿も仕事帰りに池袋のカフェで書いている.

 鴨頭さんは池袋でゴミ拾いをしている人の話をする.ゴミ拾いという仕事が彼の自尊心を貶めていたが,彼が池袋のゴミを拾い続けていることで,日中人々が池袋の街で楽しく過ごすことができるのだと鴨頭さんはいう.池袋の街のゴミ拾いは惨めな仕事ではなくて,君は人々を幸せにする立派な仕事をしているのだ,と彼に説いたという.都内のゴミ拾いという仕事については色々と搾取構造などを指摘することもできようが,まずはゴミ拾いをしてくれてありがとう,と心の中で感謝したい.そしてぜひゴミ拾いを仕事とする人々が十分に報われることを願っている.

 ゴミ拾いの仕事が人々の笑顔を作っているが,その仕事は一見すると目に見えないときに行われている.私たちの目に見えないところで,私たちの幸せを担っている人々がいる.その仕事は直接目に見えないにせよ,間違いなく存在する.直接目に見えない世界にも大事なものがあることを鴨頭さんは伝えている.