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ヴィーコ『新しい学』覚書(17)

目次

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ヴィーコ『新しい学』(承前)

著作の観念(承前)

ヴィーコのいう「自然神統記」とはヘシオドスの『神統記』のことか

また、ここでは、この新しい批判術諸原理を用いて、人間的な必要または利益の、異教世界の最初の人間たちによって気づかれたどのような特定の時点および特殊な機会に、かれらは、かれら自身がみずから作り出して信じこむにいたった恐るべき宗教をもって、まずはどの神々をついではどの神々を想像していったのかが、省察される。そのような自然神統記、すなわち、最初の人間たちの頭の中で自然的に作られていった神々の系譜は、神々の詩的歴史についての悟性的に推理された年代学をあたえてくれるのである。

(Vico1744: 6-7, 訳: 上26〜27頁)

ここで触れられている内容は、訳者の上村忠男先生が示しているように、ちょうど本書第一部「年表への注記」の以下の箇所と対応しています。

この時代についておもしろいことをひとつ、神話伝説はわたしたちに語っている。神々は地上で人間たちと交わっていたというのだ。わたしたちもまた、年代学に確実性をあたえるために、この著作において、あるひとつの自然神統記、すなわち、人間的な必要または利益にかかわる一定の機会がおとずれたとき、それらを自分たちに恵みあたえられた援助ないし恩恵であると感じとって、ギリシア人の想像力のなかで自然に作られていった神々の誕生の系譜を省察するであろう(当時は、世界がいまだ幼児期にあって、もろもろの恐るべき宗教に威圧されていた。こうして、人間たちが見たり、想像したりしたもの、あるいはまたかれら自身が作り出したものまでも含めて、これらのいっさいをかれらは神々であると受けとっていたのだった)。そして、いわゆる〈大〉氏族の有名な十二の神々、あるいは家族の時代に人間たちによって祭られていた神々について、詩的歴史についての悟性的に推理された年代学を用いて十二の小時期を設けることによって、神々の時代九百年間続いたことが確定される。こうして世俗の世界史に起源があたえられることになるのである。

(Vico1744: 51, 訳: 上111〜112頁)

ヴィーコがここで「自然神統記 Teogonia Naturale 」と呼んでいるものは、これが「ギリシア人の想像力のなかで自然に作られていった神々の誕生の系譜 Generazione degli Dei, fatta naturalmente nelle fantasie de'Greci 」である点を考慮すると、おそらく紀元前700年頃の古代ギリシアの詩人ヘシオドス(Ἡσίοδος)の作品とされている叙事詩『神統記』(θεογονία)のことを指していると思われます。「テオゴニアー」という言葉はそもそも「神々の誕生の系譜」の意です。

したがってまたヴィーコが「十二の神々 dodici Dei 」と呼んでいるのも、ギリシア神話のいわゆるオリュンポス十二神(Δωδεκάθεον)のことであろうと思われます。

(つづく)

文献