まだ先行研究で消耗してるの?

真面目に読むな。論理的に読むな。現実的なものは理性的であるだけでなく、実践的でもある。

ヴィーコ『新しい学』覚書(16)

目次

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前回が半年以上前であるから、私自身も内容を忘れてしまっている。と同時に『もう半年も経ってしまったのか』という驚きを禁じ得ない。無理を承知で少しばかり読解を進めてみる。

ヴィーコ『新しい学』(承前)

著作の観念(承前)

それというのも、ここで見いだし直される詩のいまひとつ別の新たな諸原理に続いてやってくる、同じくここで発見される神話学のいまひとつ別の新たな諸原理によって、物語〔神話伝説〕というのはギリシアの最も古い諸氏族の習俗の真実にして厳格な歴史であったこと、そして、第一には、神々の物語はなおも最も粗野な状態にあった異教世界の人間たちが人類にとって必要または有用なことどものすべてを神であると信じていた時代の歴史であったことが論証されるからである。なお、そのような創作者最初の諸民族自身であったのであって、最初の諸民族はすべて神学詩人たちからなっていたことが見いだされるのである。疑いもなく神々の物語によって異教諸国民を創建した当の者たちであると伝承がわたしたちに語っている、例の神学詩人たちからである。

(Vico1744: 6, 訳: 上26頁)

この箇所を読解するにあたって、「物語」という語に注目してみよう。ヴィーコは本書第2巻「詩的知恵」第2部「詩的論理学」第1章「詩的論理学について」の箇所で、「物語」という言葉の語源的解明を以下のように試みている。

論理学 Logica という言い方はギリシア語のロゴス λόγος という語からやってきたものである。これは最初、そして本来は物語を意味していた。それがイタリア語に移し換えられてファヴェッラ favella〔言葉〕となったのだった。また、物語ギリシア語ではミュートス μῦθος とも言われた。そして、このミュートスからラテン語ムートゥス mutus 〔無言の/沈黙した〕という語は出てきている。言葉は、人々がまだ無言であった時代に、まずはストラボン*1が黄金のくだりで音声語ないしは分節語以前に存在したと述べているメンタルな言語として生まれたのだった。したがって、ロゴス λόγος観念話し言葉の双方を指しているのである。

(Vico1744: 153, 訳: 上324〜325頁, 訳文は改めた)

「ロゴス λόγος 」と「ミュートス μῦθος 」とは「物語」を意味するものとして対比的に用いられていた。ヴィーコが「ロゴス λόγος は観念と話し言葉の双方を指している」と述べるとき、ヴィーコは「ロゴス」の相異なる二重の意味を強く認識していたといえる。

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文献

*1:ストラボン(Στράβων, 紀元前64年/63年 - 24年頃)は古代の歴史学者・地理学者。著書に『歴史』(Historica hypomnemata)、『地理誌』(Γεωγραφικά)など。