まだ先行研究で消耗してるの?

真面目に読むな。論理的に読むな。現実的なものは理性的であるだけでなく、実践的でもある。

松岡正剛『情報生命』(角川ソフィア文庫、2018年)

 松岡正剛『情報生命』(角川ソフィア文庫、2018年)を買って読みました。 松岡正剛の千夜千冊という有名なサイトがありますが、そこから加筆修正して文庫にしたものが本書だそうです。

f:id:sakiya1989:20181023104134j:plain

 内容がネットで読めるとはいえ、なんだかんだ言って紙に印刷された書籍として読むのは最高ですね。ディスプレイを眺めて読むのとはやはり違います。もちろん情報を得るだけならタブレットのディスプレイで十分なのですが、私が読書体験を通じて身体が喜びを感じるのはやはり紙媒体のようです。それがなぜなのかは分からないけど、もしかすると青年期の紙媒体を通じた読書が身体に染み付いてしまっているのかもしれません。

 本書にはミーム*1オートポイエーシス*2カオスの縁シンクロニシティ*3などの概念が登場します。個人的には「生命体における情報をダーウィン進化論的に捉える」という視点がすごく刺激的でした。

 そして本書にインスピレーションを得て、「情報における生命」あるいは「情報的生命」というものがあり得るかどうかについて考えをめぐらしました。現在に引きつけて考えると、SNSTwitterFacebook)は(文字も写真も動画もエンコードされたデータを送っているという意味で)実は情報のやりとりだと言えますが、しかし情報のやりとり以上のものがそこにはあるはずで、ゆえにSNSに生命を感じるとはどういうことなのかと考えながら読み進めていきました。

 とても面白かったので、何故か夜中にこの本の小テストを作ってしまいました。予習・復習用に、ぜひ解いてみて欲しいです。

docs.google.com

文献

*1:ミーム(meme)とは、リチャード・ドーキンスによって提唱された概念で、「遺伝子(gene)のスペルにあわせて模倣や記憶を“遺伝”しているかとおもわせる」(松岡 [2018]:130頁)ものである。「文化意伝子」と解釈されている。

*2:オートポイエーシス・システムとは「トポロジカルな理論生物学によって推理できる自律的・自己言及的・自己構成的なシステム」(松岡 [2018]:186頁)であり、それゆえ閉鎖系である。ウンベルト・マトゥラーナ&フランシスコ・ヴァレラ『オートポイエーシス』(河本英夫訳、国文社、1991年)では、オートポイエーシス・システムの特徴として「①自律性、②個体性、③境界の自己決定、④入力も出力もないこと」(松岡 [2018]:187頁)があげられている。

*3:シンクロニシティとは、そこにははっきりした因果関係などないはずなのに、まるで隠れたリズムが同期的にはたいていたかのように結び合わされている現象が場面をこえて同時的におこっていることをいう」(松岡 [2018]:305頁)。