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Google+の閉鎖とユーザーの情報流出について

 先日、Google+の閉鎖がアナウンスされた。サービスは2019年8月をもって終了予定だそうだ。

jp.techcrunch.com

 ちょうど「Google+つまんないな」と思っていたタイミングだったので、Google+閉鎖のニュースを見たとき、「無くなるのか、最近使いづらいし良いタイミングだな」と思った。

 個人的な感想だが、Google+は最初に触った瞬間から今ひとつ面白みに欠けるなと感じていた。最近までその理由は分からなかった。だが、敢えて理由を言語化するならば、おそらくGoogle+は自分の感情が揺さぶられないから面白くないのだろう。

 まず、あの+(プラス)ボタンを押したところで、Twitterのようにつながりを感じたり、広がっていく感じが全然しない。投稿記事が四角く表示されるのも、なんだか整理されすぎてて面白みがない。

 ちなみにGoogle+閉鎖についてのコメントで僕が面白いと思ったのは、Hideyuki Tanakaさんの次のコメントだ。

Hideyuki Tanakaさんは、「Googleのソーシャル的なものへの考え方」と「世間」との衝突を示唆している。もちろん「世間」とは「ソーシャル的なもの」に他ならない。

 彼の示唆にインスピレーションを得て端的に言うならば、Googleの考え方とSNSのあり方とが実は相反するものである可能性がある、ということになるだろう。

 では、Googleの考え方とは何か。それは以下の言葉に端的に示されている。

Googleの使命は、世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすることです。」(「Google について」より)

Googleによって開発されたあらゆるサービスの根本理念が、上の一文に示されていると言える。確かに、Googleは情報を整理することと、アクセスしやすくすることには長けている。例えば、写真を圧縮しクラウド上に無制限に保存することができるGoogleフォトでは、デバイスを問わず写真にアクセスでき、またアップロードされた写真は顔を機械学習で自動識別し、整理され、音声検索などで簡単に調べられる。またオフィスソフトの類は、ドキュメントやスプレッドシートを用いればGoogleドライブで代替することができる。

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 だが、SNSの醍醐味は、人々が情報発信とそれへのコメントを通じて感動を分かち合うところある。この感動の度合いが、Google+には少し物足りないように個人的には感じた。TwitterFacebookで「いいね」を押された時の報酬系ドーパミンが、Google+でははたらかないのだ。(もちろんGoogle+で主に活動して楽しんでいる人たちがいるのも知っているのだが。)

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 おそらくSNSは俯瞰しにくくて、なおかつもっと混沌としてて良いのだと思う。Googleお得意のタグ付けやサークルという切り分けによって情報を整理しすぎると、SNSの混沌*1が秩序付けられて、創発的な面白みがなくなってしまうのではないか、そんな気がしてならない。

 ちなみに、閉鎖する理由として、ユーザーの情報流出という問題が指摘されていて、これはこれでかなり痛いニュースだ。

gigazine.net

 ちょうど僕は、先週あたりに、「スマートフォンGoogleアカウントとかよく分からないという人に「Googleアカウントに登録して情報の流出とか大丈夫なんですか?」と聞かれたばかりだった。

 そこで、僕はこう答えた。「大丈夫かどうかと聞かれたら、絶対に大丈夫とは言い切れないです。常にネットに繋がっているので、いつ(Googleアカウントの)情報が流出しないとも限らないです。もちろん(Googleの)データセンターがどこにあるか一般には分からないように分散されていて、(Googleは)セキュリティ対策もしてるはずですが、(流出する)リスクはゼロにはならないないです。でも、Androidのシェアは大半を占めていて、Androidを使っている人は全員Googleアカウントを持っています。そうでないとアプリを入れられないので。」

 正直、僕のこの答えが必ずしも正解だとは思わない。特に最後の部分、<Androidを使っている人がGoogleアカウントを持っている>から、<Googleアカウントを使っても良い>という帰結には決して至らない。だから余計な言葉だとは自分でも思ったが、こういう質問をしてくる初心者には多少安心させるために「みんな使っているから」などと言わざるを得ない部分もある。しかし、「みんな使っているから」などと人から言われたら、僕は内心ムカッとする。クソみたいな理由だからだ。結局のところ、<Googleアカウントを作らなければAndroidが機能しないから、嫌でもGoogleアカウントを作成せざるを得ない>というだけの話だ。

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 「Googleアカウントに登録して情報の流出とか大丈夫なんですか?」という質問は、正直なところ情報管理リスクの観点からみて極めて素人臭く感じた質問だが、ある意味で本質を突いた良い質問でもあった。少なくとも、セキュリティ対策を講じれば万事解決ということには決してならないのだから、我々ができることといえば、Googleだからといって情報管理を完全に信頼してしまうのではなく、情報は常に漏洩する可能性を秘めているということを認識しておくことと、可能な限り、漏洩しても良い情報しか書いたり保存しないようにしておくことぐらいだろう。

*1:SNSの混沌の代表例は、Twitterリツイート機能だ。突如としてタイムラインにフォロー外のアカウントのつぶやきが紛れ込んでくる。アカウント間のやりとりが公開されているし、批判も飛び交う。さらにブロック、鍵アカ、アカウント停止等々…。Twitterはあまりにも混沌としている。