まだ先行研究で消耗してるの?

真面目に読むな。論理的に読むな。現実的なものは理性的であるだけでなく、実践的でもある。

田上 孝一[編著]『権利の哲学入門』(社会評論社、2017年)

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昨年出版された田上 孝一[編著]『権利の哲学入門』(社会評論社、2017年)には、自分も執筆者の一人として参加した。この本は二部構成であり、第一部は「権利の思想史」、第二部は「現代の権利論」となっている。

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第一部「権利の思想史」では、アリストテレス古代ローマトマス・アクィナスホッブズ*1、ロック、ルソー、カント、J.S.ミル、ヘーゲルマルクスの権利論が扱われている。このように「権利」というテーマで各哲学者・思想家の専門家が執筆した日本語の論集はこれまでになかったと思われる。その意味で画期的な本だと思う。

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 もちろん書籍として出版する以上、文字数の制限が存在する。なので、それぞれの執筆者が書きたくても書ききれなかった内容が多数存在すると思われる。かくいう自分がそうであった。「ヘーゲルの権利論」というテーマ(ヘーゲル法哲学の核心に当たるかもしれないテーマ)を頂きながら、ヘーゲルの「法律(Gesetz)」論やヘーゲルの「正義(Gerechtigkeit)」論について考えたことは、テーマ及び文字数の関係で削ぎ落とさざるを得なかった。

ヘーゲル法哲学の邦訳では、そのタイトル(『の哲学』*2からしていきなりRechtが「法」と訳されてしまうので、日本語表記では「法律」と「権利」の差異にどうしても無頓着になりがちである。そのため、本来であれば、ヘーゲルの「法律」論や「正義」論も論じることができれば、私が著した「ヘーゲルの権利論」の内容もよりクリアに伝えられることができたかもしれない。 

*1:Amazonの内容紹介では、「ホップスの権利論」と記載されているが、「ホッブズ」の間違い。

*2:Hegel, Grundlinien der Philosophie des Rechts oder Naturrecht und Staatswissenschaft im Grundrisse, 1821.