はじめに あらかじめ断っておくが、ここで「ヘーゲルと仏教」について何かが明らかになるということではない。ここでは筆者自身が『「ヘーゲルと仏教」というテーマ設定もアリだな』と思えるようになったということを、ただ単に書き留めておくに過ぎない。 …
はじめに 本稿ではヘーゲル『美学講義』(Vorlesungen über die Aesthetik)を取り扱う。 ジャック・デリダ(Jacques Derrida, 1930-2004)はその代表作『弔鐘』の中でヘーゲル『美学講義』の一節を参照している。筆者もまたデリダ『弔鐘』を解釈している最…
目次 ジャック・デリダ『弔鐘』(承前) 【左】ヘーゲル欄 インドの男根柱 文献 sakiya1989.hatenablog.com ジャック・デリダ『弔鐘』(承前) 【左】ヘーゲル欄 インドの男根柱 Deuxième passage: la colonee phallique de l'Inde. L'Esthetique en décrit …
目次 ジャック・デリダ『弔鐘』(承前) 【左】ヘーゲル欄 花の宗教 文献 sakiya1989.hatenablog.com ジャック・デリダ『弔鐘』(承前) 【左】ヘーゲル欄 花の宗教 Premier passage : la religion des fleurs. Dans la Phénoménologie de l'esprit, le déve…
目次 ジャック・デリダ『弔鐘』(承前) (左)ヘーゲル欄 遊び戯れる二つの特殊な事例 文献 sakiya1989.hatenablog.com ジャック・デリダ『弔鐘』(承前) (左)ヘーゲル欄 遊び戯れる二つの特殊な事例 Deux passages très déterminés, partiels, particul…
目次 ヘーゲル『法の哲学』(承前) 第三部「人倫」第一章「家族」(承前) 「自然的衝動」よりも優位に立つ「精神的な絆」 文献 sakiya1989.hatenablog.com ヘーゲル『法の哲学』(承前) 第三部「人倫」第一章「家族」(承前) 「自然的衝動」よりも優位に…
目次 ヘーゲル『法の哲学』(承前) 第三部「人倫」第一章「家族」(承前) 婚姻の出発点 婚姻における自己制限と解放 文献 sakiya1989.hatenablog.com ヘーゲル『法の哲学』(承前) 第三部「人倫」第一章「家族」(承前) 婚姻の出発点 第162節 婚姻の主観…
林要『温かいテクノロジー AIの見え方が変わる 人類のこれからが知れる 22世紀への知的冒険』(ライツ社、2023年) ロボットとメンタルケア 著者は、かつてPepperの開発主任で知られる林要(1973-)氏である。林氏はPepper開発後に起業し、本書の表紙のイラ…
TVアニメ『呪術廻戦』(原作: 芥見下々)第2期「懐玉・玉折」を見た。五条悟はいかにして「最強の呪術師」五条悟になっていくのか、そして敵キャラとして登場する夏油傑はいかにして「最悪の呪詛師」夏油傑になっていくのか、というエピソードを描き出したの…
クリス・ミラー『半導体戦争——世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防』(ダイヤモンド社、2023年) 曖昧な「地政学 Geopolitik」の定義をめぐる重要な要素の一つに「資源」の問題がある。これまで石油エネルギーに関して資源ナショナリズムの問題が議…
岸政彦/梶谷懐編著『所有とは何か:ヒト・社会・資本主義の根源』(中央公論新社、2023年) 読書前ノート(31)で坂上孝『プルードンの社会革命論』を取り上げた際に「所有」について現代的に再考する必要があるのではないかと述べたが、まさしくそれを行…
目次 坂上孝『プルードンの社会革命論』(平凡社、2023年) フランス社会主義は「政治」革命ではない 生い立ち 所有論 産業組織論 国家論 坂上孝『プルードンの社会革命論』(平凡社、2023年) フランス社会主義は「政治」革命ではない 阪上孝『フランス社会…
目次 小冊子『熱風』2023年7月号 無料と侮るなかれ 小冊子『熱風』2023年7月号 無料と侮るなかれ 書店で会計を済ませようとしたらこれがフリーペーパーとして置いてあったことに気づいた。『君たちはどう生きるか』(宮﨑駿監督、2023年)が絶賛公開中のスタ…
目次 カント『純粋理性批判』(覚書) なぜカントは『純粋理性批判』第二版のエピグラフにベーコンからの引用を載せたのか 文献 sakiya1989.hatenablog.com カント『純粋理性批判』(覚書) なぜカントは『純粋理性批判』第二版のエピグラフにベーコンからの…
目次 稲岡大志/森功次/長門裕介/朱喜哲『世界最先端の研究が教えるすごい哲学』(総合法令出版、2022年) すごくない哲学 タウマゼインとエウレカ——「すごい哲学」とは何か 稲岡大志/森功次/長門裕介/朱喜哲『世界最先端の研究が教えるすごい哲学』(…
目次 はじめに カント『純粋理性批判』 初版と第二版 クリティカの伝統 文献 はじめに しばらく哲学から遠ざかってたような気がする。ここ三ヶ月ほど、仕事の傍らどうも哲学書に手を伸ばすことができなかった。哲学研究は余暇がないと厳しい。時間的にも、精…
手の親指と人差し指の付け根の辺りで皮膚が剥けた。一体何をしていたのかというと、私は大きなバルーン人形に空気を入れていただけである。空気入れのハンドルに対して、親指と人差し指とのあいだの付け根の部分をフックにしてポンプを押し出す際に接触部分…
松永博樹・伊藤学『P/Lだけじゃない事業ポートフォリオ改革 ROIC超入門』(日本能率協会マネジメントセンター、2021年) ROIC(ロイック)とは「投下資本利益率 Return On Invested Capital」のことであり、簡単に言えば「投下資本 Invested Capital」に対す…
志村真幸『未完の天才 南方熊楠』(講談社、2023年) 通勤中に読んでいたが面白くて仕方がない。熊楠は抜粋ノートを作っていた。子どもの頃から大量に。マルクスと同じように。熊楠は対訳本を用いて様々な言語を学んでいた。酒場のカウンターで聴き耳をして…
石原真人『自分でパパッとできる事業計画書』(祥伝社、2014年) 事業計画書を書こうと思っている。起業するためではない。自チームを一つの架空の会社(fictive company)として運用していく姿勢が収益体質の改善を図るのに有益ではないかと考えたからだ。…
田尻望『付加価値のつくりかた』(かんき出版、2022年) あっという間に今年も半年が過ぎた。6月も気づけば下旬。もう直ぐボーナスの支給日である。仕事にかまけてブログに書くことも少なくなった。仕事ばかりしている。休日に趣味の読書よりも仕事のための…
津野香奈美『パワハラ上司を科学する』(筑摩書房、2023年) 本書は10年にわたりパワハラを研究してきた著者によって書かれた入門書である。「科学する」のタイトル通り、パワハラについて具体的な数値データに基づいて分析結果が示されている。著者がパワハ…
目次 マルクス「フォイエルバッハ・テーゼ」(承前) 文献 sakiya1989.hatenablog.com マルクス「フォイエルバッハ・テーゼ」(承前) 10テーゼ Der Standpunkt des alten Materialismus ist die bürgerliche Gesellschaft, der Standpunkt des neuen die me…
大塚ひかり『ヤバいBL日本史』(祥伝社、2023年) 〈性政治〉の誕生 本書はBL(ボーイズラブ)の観点から日本史を整理するという大胆な試みを行っている。著者の大塚ひかりさんは、古典の内容を的確に捉え、現代の言葉で表現することに長けており、すでにい…
目次 マルクス「フォイエルバッハ・テーゼ」 11テーゼ 「世界」はマルクスの文脈だけで解釈されるべきか 文献 マルクス「フォイエルバッハ・テーゼ」 11テーゼ Die Philosophen haben die Welt nur verschiden interpretirt, es kömmt drauf an sie zu verän…
sakiya1989.hatenablog.com この三日間、総括資料をつくるために読書をしていた。資料作成もせずに読書に耽っているというのは、勉強しなければいけないときに部屋の片付けをしたくなる気持ちにどこか似ている。もちろん部屋が片付くことは好ましいことだし…
sakiya1989.hatenablog.com 何が(どういったメッセージが)刺さるか(バズワードや時代性を考慮に入れる) バズワードといえば、一年前であればメタバースであった。ここ最近聞かれるようになった言葉といえば、「人的資本経営」だとか「リスキリング」など…
はじめに 会社で一週間後に総括発表をやるように言われている。部署編成が変わりたった一ヶ月で何を総括するのかという声もある。私の場合は逆に毎週アクション内容を課内で発信し続けているので、資料じたいは作成可能だと思うが、休日に資料作成に取り掛か…
目次 ヘーゲル『法の哲学』(承前) 世界史(承前) ギリシア帝国 ポリスを支えるオイコスにおける「欲求」の担い手としての奴隷身分 文献 sakiya1989.hatenablog.com ヘーゲル『法の哲学』(承前) 世界史(承前) ギリシア帝国 第356節 2)ギリシア帝国 こ…
濱口桂一郎『ジョブ型雇用社会とは何か——正社員体制の矛盾と転換』(岩波書店、2021年) 昨今聞かれるようになった「ジョブ型雇用」という用語を生み出したのは、本書の著者である濱口桂一郎(1958-)だという。誤解を恐れず言うならば、日系企業の「メンバ…