まだ先行研究で消耗してるの?

真面目に読むな。論理的に読むな。現実的なものは理性的であるだけでなく、実践的でもある。

Wikipediaを利用した学習法

はじめに

最近、知らない言葉が増えてきました。

いや、正確に言うと、以前から少しずつ見聞きしていたのですが、改めて考えると説明できないし、よく分かっていない言葉が沢山あったのです。グラント*1、ハーマン、レイ・ブラシエ*2、加速主義、ゼノフェミニズム…などなど。

というわけで、しばらく普通に勉強してみようと思います。

 

ところで勉強っていっても、どうやって勉強するのでしょう。

普段私はフルタイムで働いています。独学で新しい用語を覚えていくのは、意外と大変です。本を買ってなんとな〜く読んでいても、頭に入ってこないこともあります。

そこで僕はWikipediaを活用して、自分専用の用語集を作ることにしました。

Wikipediaを利用した学習法

Wikipediaから気になる言葉をピックアップしてGoogleドキュメントにコピペし、そしてそれを紙に印刷して批判的に読む。知らない言葉には印をつけてさらに調べる。ーーたったこれだけですが、個人的にはものすごく学習効果が高いと感じています。

具体的に「加速主義」の項目を例に取ってみましょう。

ja.wikipedia.org

Wikipediaの「加速主義」の項目には次のように書いてあります。

「1848年の「自由貿易問題についての演説」と題する演説におけるカール・マルクスを含め、多くの哲学者が明らかに加速主義的態度を表明している。  」(下線引用者)*3

この箇所を読むだけでも、次のような疑問が湧いてきます。

  • 「多くの哲学者」って具体的に誰なのか?
  • 「明らかに」って書いてあるけど、本当に明らかなのか?
  • マルクス自由貿易問題についての演説」から引用しているけど、この引用は適切なのか?
  • 「加速主義」がただ単に加速度の増大を問題とするのみならず、常に資本主義との関連において語られるとするならば、「自由貿易問題についての演説」よりも、むしろ『経済学批判』や『資本論』およびその諸草稿からも引用し、これらのうちにマルクスの加速主義的態度をみるべきではないのか?
  • マルクス一人取り上げたとしても、その加速主義的態度は初期マルクスから晩期マルクスまで一貫しているのか否か。

とまあ、こんな感じで批判的に読んでいく感じです*4

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文献

 

  

*1:Ian Hamilton Grant (1963-). 主著に『シェリング以降の自然哲学』(Philosophies of Nature After Schelling, London and New York, 2006)がある。「『シェリング以後の自然哲学』においてグラントが行っているのは、ドゥルーズ哲学の源泉の一つであるシェリングの自然哲学に遡り、それ位よってドゥルーズとそのカント主義の残滓を除き去ろうとする試みであった。」(浅沼 2019、107頁)。

*2:Ray Brassier (1965-). 主著に『ニヒル・アンバウンド:啓蒙と絶滅』(Nihil Unbound: Enlightenment and Extinction, London, 2007)がある。ブラシエは「思弁的実在論 Speculative Realism (SR) 」という概念を考案したとされる。「ブラシエの思想の核心を乱暴にまとめると次のようになるだろう。すなわち、我々は人類が絶滅した後の世界について思考することができるだろうか?あるいは言い換えれば、人間にとってのあらゆる意味や目的が滅却された地点においても、それでも思考は可能だろうか?そしてもし可能であるとするならば、それはどのような思考なのだろうか?等々……。」(木澤 2019、189頁)。

*3:「加速主義」Wikipedia、2019年6月27日閲覧。

*4:マルクスと加速主義については、小泉 2019を参照のこと。「現代の左派加速主義は、愚直なまでにマルクスの古典的図式に立ち返ろうとする一面をもっている。そしてこの回帰は、七〇年代・九〇年代の過剰な内在主義を緩和して、資本の論理を「外在化」したという一点において重要なものである。」(小泉 2019、131頁)。