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今回は、とある研修で起きた事件について書きたいと思います。
ゼリア新薬の新人研修での事件
昨日のBuzzFeed Newsの記事によれば、2013年に起きたゼリア新薬の22歳男性社員の自殺が、2015年に新入社員研修によるものとして労災認定を受けたそうです。
労基署が労災認定として注目した「意識行動改革研修」という研修は、ゼリア新薬がビジネスグランドワークス社に委託して、4月10日〜12日までの3日間行われたものだったそうです。
労基署が、自殺の原因として、BGW社による「意識行動改革研修」における「過去のいじめ体験」の告白と、吃音の指摘、完全にアウトな講師のコメント(「何バカなこと考えているの」「いつまで天狗やってやがる」「目を覚ませ」ーこんなことを講師に書かれたら、新入社員であれば特に、ショックを受けるはずですー)を証拠として挙げることで、労災認定することができたのでしょう。
Twitterの反応
Twitter上でも何人かの方々が反応し、コメントしています。
今でもこういう根性系とか「過去の自分を見つめ直させる系」の新人研修やってる会社、他にもありそうだよね。時代錯誤も甚だしい。ゼリア新薬の22歳男性「ある種異様な」新人研修受け自殺 両親が提訴(BuzzFeed Japan) https://t.co/sD4iDgMssg
— ちきりん (@InsideCHIKIRIN) 2017年8月8日
トレンドの新人研修受け自殺って何かと思ったら、これ完全に90年代に流行った自己啓発系洗脳セミナーの手口じゃ…
— みのうら (@wind_steed) 2017年8月8日
囲い込み家に返さず、眠らせず、一言一句間違えるなと無駄な暗記、徹底的な否定、罵倒、暴力etchttps://t.co/e7BU3UG7Xr
22歳男性が新人研修受け自殺した件でゼリア新薬が注目されてるけど、他にもたくさんある。あれは氷山の一角。
— しろえち@アニメ好き (@shiroechi2) 2017年8月8日
「意識行動改革研修」って聞けば立派だけど、やってることは洗脳だから。上司の理不尽なパワハラ・セクハラを普通と錯覚するまでひたすら心理的負荷を与え続ける。時代錯誤も甚だしい
新入社員を洗脳するのは簡単だよ。
— 岡口基一 (@okaguchik) 2017年8月8日
逃げられない研修施設のようなとこで徹底的に落とす。自信を完全に失わせる。
心が完全にズタボロになったところで上司が優しく声をかける。俺と一緒に頑張ろう(^_^)
思わず泣き出し上司に抱きつく新入社員https://t.co/5pUT3ITdau
研修を請け負ったBGW社の新人研修のタイムスケジュール。具体的な内用はほとんど何もなく、ハラスメント的社風を叩き込むだけなのが一目瞭然。|ゼリア新薬の22歳男性「ある種異様な」新人研修受け自殺 両親が提訴 https://t.co/xr55hXAgin pic.twitter.com/B8HnRjomzP
— 橋本一径 (@KazumichiH) 2017年8月8日
Twitter上では「これは洗脳ではないか」というコメントがいくつか目立っていますね。
岡田尊司『マインド・コントロール』
岡田尊司『マインド・コントロール 増補改訂版』(文春新書、2016年)によれば、「情報入力を制限する、または過剰にする」(第一の原理)、「脳を慢性疲労状態におき、考える余力を奪う」(第二の原理)ことなどが、マインド・コントロール(その最たるものが「洗脳」)の原理だそうです。
「外界から隔離し、外部の人と話のできない孤絶した状態に置くことは、洗脳の基本である。最初の章で触れた「トンネル」状態を作り出すことによって、精神的な視野狭窄状態をもたらす。目的とする一点にだけ関心を集中させ、それ以外のことを考え無くさせ、その一点に向かって進んでいくしか内容に仕向けていく。」(岡田尊司『マインド・コントロール 増補改訂版』文春新書、2016年、216〜217頁)
「洗脳においては、脳を絶えずビジーな状態に置くとともに疲労困憊させる方法が徹底して取られる。まず頻用されるのは、睡眠時間を奪い、その質を劣悪なものにするということである。」(同前、222頁)
BuzzFeed Newsの記事には「玉木弁護士が「宿泊施設にほぼ拘束され、6時間の睡眠も確保できないような長時間研修を受けていた」と指摘している」とありましたが、もしかすると、4月から8月まで長期に渡る泊りがけの新人研修(問題とされている「意識行動改革研修」だけではなく)は、外部との接触を極力遮断することで、情報の制限と過剰の両方を実現し、精神的な視野狭窄をもたらすと同時に、睡眠時間をも奪うことで、洗脳が可能な環境を作り出しているのかも知れません。