まだ先行研究で消耗してるの?

真面目に読むな。論理的に読むな。現実的なものは理性的であるだけでなく、実践的でもある。

雑記

羽田空港航空機衝突事故

2024年1月2日、羽田空港で日本航空(JAL)旅客機と海上保安庁の航空機が衝突事故を起こした。旅客機に乗っていた乗員乗客は全員無事避難できたが、海保庁航空機に搭乗していた船長を除く隊員5名が亡くなった。この事故の詳細については、のちに調査報告書で…

令和6年能登半島地震とX=旧Twitter

2023年12月31日に放送された第74回NHK紅白歌合戦では、YOASOBI「アイドル」のパフォーマンスが話題になった*1。「アイドル」の歌自体が他の追随を許さない魅力を放っていたのだが、そのダンスパフォーマンスにK-POPアイドルグループが参加したことで、故・ジ…

悪用の人文学——パノプティコン型マネジメントの罪とその贖い

〈パノプティコン〉は一般化が可能な一つの作用モデルとして理解されなければならない。人間の日常生活と権力との諸関係を規定する一つの方法として—— (ミシェル・フーコー『監獄の誕生——監視と処罰』田村俶訳、新潮社、1977年、207頁) 目次 はじめに 非正…

TVアニメ『呪術廻戦』第2期「懐玉・玉折」所感

TVアニメ『呪術廻戦』(原作: 芥見下々)第2期「懐玉・玉折」を見た。五条悟はいかにして「最強の呪術師」五条悟になっていくのか、そして敵キャラとして登場する夏油傑はいかにして「最悪の呪詛師」夏油傑になっていくのか、というエピソードを描き出したの…

手と顔

手の親指と人差し指の付け根の辺りで皮膚が剥けた。一体何をしていたのかというと、私は大きなバルーン人形に空気を入れていただけである。空気入れのハンドルに対して、親指と人差し指とのあいだの付け根の部分をフックにしてポンプを押し出す際に接触部分…

山口周氏の「怒り」についてのTweetをめぐって

目次 はじめに 筆者とQmQさんとのやりとり かつて筆者は「怒り」についてどのように考えていたのか はじめに 先日、Twitter上で山口周(@shu_yamaguchi)さんが「怒り」について次のようにTweetしていた。 古代ギリシア以来、哲学者は「怒りは正しいか」とい…

成田悠輔「集団自決」発言について(2)

目次 筆者と小田さんとのやりとり(1) 成田氏の「集団自決」発言は経済合理性に基づいているか 文献 sakiya1989.hatenablog.com 筆者と小田さんとのやりとり(1) 成田氏の「集団自決」発言の件については、Twitter上で熱りが冷めてきているので、今更書…

成田悠輔「集団自決」発言について(1)

目次 はじめに 成田悠輔「集団自決」発言の文脈 「口にしちゃいけないって言われてることは、だいたい正しい」 「高齢者は集団自決すべき」は「人としての倫理を大きく踏み外している」のか? 老害化する「前」と老害化した「後」 はじめに 約1年前に成田悠…

2022年に書いた記事を振り返る

目次 はじめに 2022年に書いた記事まとめ(全80本) 1月(ヘーゲル世界史、バウムガルテン美学、読書前ノート) 2月(読書前ノート、ヘーゲル抽象法) 3月(数学、読書前ノート、ヘーゲル世界史) 4月(執筆なし) 5月(フォイエルバッハ『将来の哲学の根本…

読書前ノート(13)物江潤『デマ・陰謀論・カルト スマホ教という宗教』

物江潤『デマ・陰謀論・カルト スマホ教という宗教』(新潮社、2022年) 陰謀論と免疫反応 最近「陰謀論」をテーマにした本を何冊か買ってきた。今更ながら「陰謀論」について考えてみようと思い立ったのは、私がついに陰謀論者と対話する機会があったからで…

パワハラ対策としてのアジール

かれこれ10年以上前になるが、「アジール」という言葉を私が知ったのは、網野善彦『無縁・公界・楽』(平凡社ライブラリー、1996年)を学生の頃に読んだときだった。アジール(Asyl)とは、概して「権力の及ばない圏域」を意味する。「権力 Gewalt」とはすな…

『梨泰院クラス』所感

目次 はじめに 『梨泰院クラス』はプラトニック・ラブを描いているのか 悲劇としての『梨泰院クラス』 なぜセロイはスアと結ばれないのか おわりに はじめに Netflixで『梨泰院クラス』(이태원 클라쓰、JTBC、2020年)を観た。陳腐な言い方になるが、面白か…

読書前ノート(11)小松原織香『当事者は嘘をつく』

小松原織香『当事者は嘘をつく』(筑摩書房、2022年) 目次 小松原織香『当事者は嘘をつく』(筑摩書房、2022年) はじめに 〈性暴力〉とは何か 「刑事司法の枠組み」から外れる〈性暴力〉 「彼」の発言と振る舞いの矛盾 ドーナツの「穴」のような「語り得(…

不条理な制度には不服従を示そう

唐突に昔の憤りを思い出したので書き綴っておく。 2015年のことである。 私は現在ソフトバンク株式会社で正社員として働いている。が、最初から正社員だったわけではなく、当初は販売契約社員として入社して働いていた。販売契約社員とは3ヶ月更新(当時)で…

読書前ノート(10)ジョルジョ・アガンベン『身体の使用』

ジョルジョ・アガンベン『身体の使用 脱構成的可能態の理論のために』(上村忠男訳、みすず書房、2016年) 筆者が本書を手に取ったのは、少なからずヘーゲル法哲学の第一部「抽象法」の解釈に役立てるためであった。ヘーゲルは次のように述べている。 【§59…

読書前ノート(9)平野啓一郎『私とは何か——「個人」から「分人」へ』

平野啓一郎『私とは何か——「個人」から「分人」へ』(講談社、2021年) メタバースと〈分人主義〉 メタバース関連書籍で何度か小説家平野啓一郎さんの〈分人主義〉について言及されていたので、本書を手に取ってみた。まずは〈分人〉という捉え方についてみ…

読書前ノート(8)バーチャル美少女ねむ『メタバース進化論』

バーチャル美少女ねむ『メタバース進化論——仮想現実の荒野に芽吹く「解放」と「創造」の新世界』(技術評論社、2022年) それは参与観察さえ〈超えて〉いる 今年最初で最大の衝撃の書かもしれない。私が本書を手にしたのは、今後のトレンドを示すための社内…

インシュレーターを買いました

目次 定在波とインシュレーター オーディオテクニカ ハイブリッドインシュレーター 定在波とインシュレーター 前回有機ELテレビやサウンドバーを購入したと書いたが、その続きである。わざわざ購入したSONYのサウンドバーの音質に満足できず悩んでいた。とい…

有機ELテレビを買いました

目次 最近購入したもの LG 55型 4Kチューナー内蔵 有機EL テレビ アイリスプラザ テレビ台 ハイタイプ ソニー サウンドバー / HT-S100F 最近購入したもの 引っ越しを機にテレビを購入した。3LDKの家に引っ越してきたので、大型テレビを置く余裕ができた。前…

県外引っ越し

4月以降の転勤先があまりにも遠くて通えないので、引っ越しをすることにした。県外へ引っ越しするのは初めてである。異動の辞令が出たのが3月3週目過ぎた頃だったので、とにかく時間がない。先週、たまたま内覧しに行った1件目の物件があまりにも優良物件だ…

読書前ノート(7)梅田百合香『ホッブズ リヴァイアサン シリーズ世界の思想』

梅田百合香『ホッブズ リヴァイアサン シリーズ世界の思想』(KADOKAWA、2022年) 「シリーズ世界の思想」という企画を立ち上げたのは一体どのような人物なのか、ということが気になっている。というのも、各思想家を担当する執筆者の人選が抜群に優れている…

読書前ノート(6)佐藤直樹『基礎から身につく「大人の教養」』/カート・セリグマン『魔法』

目次 佐藤直樹『基礎から身につく「大人の教養」 東京藝大で教わる西洋美術の見かた』(世界文化社、2021年) カート・セリグマン『魔法 その歴史と正体』(平田寛・澤井繁男訳、平凡社、2021年) 佐藤直樹『基礎から身につく「大人の教養」 東京藝大で教わ…

読書前ノート(5)イアン・ハッキング『数学はなぜ哲学の問題になるのか』

イアン・ハッキング『数学はなぜ哲学の問題になるのか』(金子洋之・大西琢朗訳、森北出版、2017年) 最近興味を持っているのが、数学と哲学の関係である。かの偉大な哲学者プラトンは、自身の設けたアカデメイアという学園において、算術や幾何学、天文学を…

読書前ノート(4)蛯谷敏『レゴ——競争にも模倣にも負けない世界一ブランドの育て方』

蛯谷敏『レゴ——競争にも模倣にも負けない世界一ブランドの育て方』(ダイヤモンド社、2021年) 「ソフトバンクでは「レゴシリアスプレイ」を活用している」という記事を読まなかったら、おそらく私が本書を手に取ることは無かっただろう。そもそも私は生まれ…

読書前ノート(3)前田鎌利『課長2.0 リモートワーク時代の新しいマネージャーの思考法』

前田鎌利『課長2.0 リモートワーク時代の新しいマネージャーの思考法』(ダイヤモンド社、2021年) 前田鎌利さんはソフトバンクのOBであり、本書ではその頃の経験に基づいてマネージャーのノウハウが語られている。東浩紀『一般意志2.0』を彷彿させるタイト…

読書前ノート(2)岩波哲男『ヘーゲル宗教哲学入門』

岩波哲男『ヘーゲル宗教哲学入門』(理想社、2014年) 神保町の三省堂書店でたまたま本書を見つけて手に取った。ヘーゲルの著作の背後には、常に宗教性(とりわけキリスト教の)が垣間見える。それは『精神現象学』であれ、『論理学』であれ、『エンツュクロ…

読書前ノート(1)赤松明彦『『バガヴァッド・ギーター』』/臼杵陽『大川周明』/エドワード・J・ワッツ『ヒュパティア』

目次 読書前ノート 赤松明彦『『バガヴァッド・ギーター』——神に人の苦悩は理解できるのか?』(岩波書店、2008年) 臼杵陽『大川周明 イスラームと天皇のはざまで』(青土社、2010年) エドワード・J・ワッツ『ヒュパティア 後期ローマ帝国の女性知識人』(…

承認のリーダーシップと言葉の生命力

目次 はじめに 承認のリーダーシップ 言葉の生命力を信じる 人々を笑顔にする仕事は直接目に見えない はじめに 最近YouTubeで鴨頭嘉人(1966-)さんの講演を聴いている.しかも繰り返し繰り返しである.鴨頭さんの講演が素晴らしく面白く仕事の為になり,他…

学術的なことは何も出来ません

最近このブログが全然更新できてないことがお分かりいただけるだろうか。とにかく仕事の方に傾倒しなければとてもやっていけないほど今は余裕がないのである。もちろん休日はあるが、休日は仕事のメールを見てしまうし不安しかない。不安を搔き消すためにビ…

気づけば師走

仕事で所属する課が変わり、勤務地も移動し、新しい役割になって早1ヶ月。『〈目まぐるしい〉とはこういうことを言うのか』と思うぐらいあっと言う間だった。とにかく頭の中は常に『!?』『ワカラナイ…』『進捗ダメです!』のサイクルを回しているだけで決…